194 レストランでの大失敗。その4。「期待しすぎ」を強めてしまったインターネット。

はじめてのお店に行くとき。
緊張します。
ワクワクしもするけれど、やはりドキドキ。
どんな店なんだろうと、
お店につくまでずっと考え緊張しちゃう。
まぁ、それがレストランを訪れる
たのしみのひとつでもあるのですけれど、
昔はそのドキドキもかなり本格的なドキドキでした。
だって今と違って、
お店の情報を手に入れる手段が限られていたから。
雑誌のレストラン紹介ページくらいでしょうか‥‥、
そうでなければ、情報通からの口コミかなぁ。
インターネットなんて便利なモノがなかった時代。
いいお店ができたよ‥‥、って聞くと、
住所を聞いてその場所の雰囲気だとか、
電話をかけて予約をするときに
電話の向こうの空気を感じて、
どんなお店かを想像してた。
つまり、イマジネーションがたよりの時代。

もし実際に行ってみた店が
想像していたお店と違った店であったとしても、
それは勝手なイマジネーションを発動してしまった
自分の責任。
仕方がないネ、とあきらめる他なかった。
でも、想像と違ったからといって、
ただあきらめてしまうのはあまりに残念。
だからいかにその場をたのしむかを一生懸命考えて、
また別の想像力を発揮させたりしたものです。


そして今。
インターネットの時代です。
気になるお店の名前を入れて、
検索ボタンをポツンと押すと、
見知らぬお店の情報が手に入る。
お店の外観。
インテリア。
どんな料理があるかがわかるだけじゃなく、
料理の写真までもがご丁寧にも載っていたりする。

レストランに行く前からそこがどんな場所だかわかる。
レストランでメニューを開く前から、
何を食べるのか決まってしまう。
だから失敗の確率は減る。
そう思って、どんどんレストランの情報を集めていくと、
頭の中は期待で溢れてしまいます。

飲食店とはお客様の期待にこたえ続けることで、
名店になっていく。
期待されないお店がつまり、人気のない店。
だからお店の人たちは昔から、
お客様から期待してもらえるように
いろんな努力をし続けている。
お店の外観をキレイに整えたり、
ときに雑誌の取材を受けたりして
お店のイメージを正しく伝える努力をするのですネ。


ただ、期待されすぎるのは弱りモノ。
どんなにがんばってお客様をよろこばせようとしても、
満足のハードルが高くなってしまっていると
「期待はずれだったね」ってことになってしまうワケです。

で、インターネットなどで
手に入れることができるさまざまな情報。
期待を煽ります。
「あのテーブルに座れるのかしら‥‥」。
「あんな料理がでてくるのかしら‥‥」。
中には実際にそのお店を利用したの人の
感想なんかが載っていて、
「へぇ、そんなサービスをしてくれるんだ」
なんてどんどん期待が高まる。

自分がこれから行く場所がどんなところか
ぼんやりとした情報しかない旅は「冒険」。
考えてみれば、昔、はじめての店に行くということは、
冒険みたいなコトでした。
自分が知っていることを確認しに行くような旅は、
添乗員さんのついてくる
パッケージツアーのような旅に違いない。
安全で、安心かもしれないけれど味気なくもある。
インターネットの時代は、便利な時代であると同時に、
「想像力を奪う時代」でもあったりします。

何かステキなモノがあるかもしれないという
ミステリアスな期待じゃなくて、
「こうあるはずだ」という期待。
その期待が外れてしまったとき、
その期待はずれの矛先が
とんでもないところに向かってしまう。
ボクも、何度か勝手な期待を裏切られて、
大人げないコトをしてしまったことがありました。
来週、恥ずかしながらの告白です。




2014-10-23-THU



© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN