そして最後に、関係性のはっきりした人といく。
レストランにおけるサービスは、
テーブル単位でおこなわれるんだよね。
誰か一人だけをサービスするのでなくて、
テーブルを囲んだ人、みんながシアワセになるように、
いいお店の人たちは気を配る。
例えば、テーブルで交わされる会話を聞きながら、
お客様の今日の気持ちとか、何を目的に来たのかだとか、
お客様に合わせたサービスのキッカケを探そうとする。
そのとき。
テーブルを囲んだ人たちが、
どういう関係の人たちなのかがわかっていると、
さまざまなヒントは伝わりやすくなる。
その関係性が曖昧だと、お店の人は「気を使う」。
気を配る。
気を使う。
似ているけれど、気持ちの向かっていく方向性はまるで逆。
例えば、同じくらいの年齢の男女であれば夫婦か恋人。
さぁ、どちらだろう。
俗に、同行の女性よりも男性が先に座るときには夫婦。
女性を先に座らせてから、ニコニコしながら
ユッタリ着席する二人連れは恋人同士か大人の関係。
男性が女性の椅子を引いてあげるようなことがあれば、
それは秘密の関係で
女性に向かって「奥様」と呼ぶコトは控えたほうがいい。
‥‥、とそんなふうに「気を使われたり」するのです。
ただレディーファースト精神を
奥さんに対しても発揮しているだけなのに、
変な気遣いをされないですむように、
予約のときに一言添える。
「妻と一緒にまいりますから」‥‥、と。
お店の人もココロ構えができる。
ご主人と一緒に、奥様をおもてなしすれば
喜んでいただける‥‥、って。
だから「母をつれてまいりますから」という一言。
お店の人を味方につけて、
良いサービスを引き出すステキなキーワードなんだよ。
そう、先輩が言ってたよ。
と、そういうボクに母は
「あら、私を出汁にいい格好をしようっていう魂胆なのね」
と、いたずらっぽく笑います。
「母だなんて言わなければ、
あの二人ってどんな関係なんだろう‥‥、って、
ミステリアスなカップルを演じるコトもできたのに」
と、悔しそうにいたずらっぽく。
さて時間は6時35分過ぎ。
ドアを開けます。
また来週。
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