ならば塩を強くすればうどんにコシがでるのかというと、
それだけじゃない。
麺の中には塩でコシを出せない麺がたまにある。
その代表が名古屋名物の「味噌煮込みうどん」。
うどんを生のまま、味噌風味の出汁をはった鍋に入れ、
クツクツ煮込んで仕上げるというのがその調理法。
だから調理している間にどんどん麺の中に
味噌の塩気が入ってくる。
普通の塩でコシをだした麺を使って作ると、
塩が強くなりすぎ食べられない。
それで名古屋の味噌煮込みうどん用の麺は真水で打つ。
塩の力をかりず、
グルテンの引っ張り感を引き出すためには
冷たい水で何度も何度も叩いて伸ばして、
小麦粉のタネを鍛えあげなきゃいけないんです。
手間はかかる。
けれど、そうして手に入れたうどんはグツグツ煮込んでも、
決して熱にへこたれず歯ごたえ残したままで仕上がる。
粉の配合にも気を配り、ただただひたすら、練り、叩く。
ラーメン用の中華麺も、圧力をかけ鍛えることで硬くなる。
まな板の上に何度も何度も叩きつけたり、
太い竹竿を押し付けながら、
上に乗っかり全体重をかけてみたりと、工夫さまざま。
製麺機を使って作るときにも、
伸ばしたタネを伸ばしてはそれを折りたたみ、
また圧力かけて伸ばして再び折りたたむ。
その繰り返しで麺にコシを出していくのです。
麺のコシは、つまり
「粉の性格」「塩の分量」「水の温度」に「鍛え方」。
この4つの工夫でだいたい決まる。
そういう麺は、どんなに長く茹でても決して壊れない。
やわらかくなってしまいはするけど、
溶けずにずっとお湯の中で踊って伸びない。
煮込んで、やわらかくなるということと、
伸びてしまうということは別のコトで、
クタクタになっても冷水に放った途端にコシをとりもどし、
ツヤツヤしてくる。
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