糸井 | ぼくは、喘息になってよかったとまでは とても言えませんけれど、 喘息のおかげで自分が得たものも 少なからずあるように思うんです。 たとえば、直感力とか、 何かを感じ取る力とか。 |
清水 | ああ、わかります。 喘息を経験すると、敏感になりますよね。 自分の肺に対する意識であったりとか、 知覚について意識がものすごく強くなる。 そういう意味では、 プラスに働いている部分もあるとぼくも思います。 |
糸井 | うん。自分のボディーを感じたり、 ほかの人がボディーを感じてるのがわかったり。 たとえば、今日、清水さんとはじめてお会いしても 呼吸のやり方みたいなものに覚えがあるんですよね。 「ああ、喘息の経験のある人だ」って。 |
清水 | (笑) |
糸井 | 喘息で発作が出てるときって、 横になってることがつらいから、 眠れなくて、起きますよね。 体がまっすぐになってると、まだましだから。 そういうときって、なにをしてました? 本読んだりとか、なにか、してました? |
清水 | ぼくは、イスに座って寝ます。 |
糸井 | 翌日、試合とかあったりするんですよね。 |
清水 | あるので、無理やり寝るんだけど、 その体勢で寝るのは限度がありますよね。 それで、体力がどんどんどんどん低下していって、 悪循環に陥っていきますよね。 |
糸井 | ぼくの場合は、つらくて眠れないときは、 起きてゲームをしてたんです。 当時は、ファミコンが出はじめたころで、 夜中にずいぶん助けてもらいましたね。 夢中になって『マリオ』とかやってると、 少し、治まるというか、忘れられたんですよ。 |
清水 | ああ、意識がそちらに。 |
糸井 | そうそう。 で、ゲームに疲れて、咳も治まってという いいタイミングが来ると、寝られたんです。 |
清水 | へぇー。 |
糸井 | ぼく、それがきっかけで ゲームを作る人になったんですもん。 感謝したんですよ。 これがオレを助けてくれた、みたいに。 |
清水 | ああ、そうなんですか。 |
糸井 | ゲームはつくってなかったでしょうね。 というか、あんなに熱心に ゲームをやってなかったと思う。 もう、「喘息で眠れぬ夜の友」でしたから。 マリオをジャンプさせているときは楽なんです。 ゲームが直接に咳をとめてくれた わけじゃないんですけど、 なにか、別のものに夢中になることが 自分を助けてくれることは学びましたね。 |
清水 | 喘息って、精神的なものも すごく大きいんですよね。 ちょっとでも、変な空気吸ったりとかして、 「あ、ヤバイ」って思うと、 意識がどうしても肺に集中してしまったり。 |
糸井 | 自分の呼吸を必要以上に 意識しちゃうんですよね。 |
清水 | そうなると、どんどん、どんどん、 弱いほう弱いほうへ流れてしまう。 |
糸井 | そうですね。 だから、心の問題で解決しよう、 というのは、ずいぶん努力しましたね。 |
清水 | それは、ぼくもそうとう。 |
糸井 | 「気合だ!」ってね(笑)。 |
清水 | ええ(笑)。 |
糸井 | それが、薬できちんと治るってなったら、 ある種、人生変わっちゃうくらいの 喜びありますよね。 |
清水 | ありますね。 |
糸井 | どんな感じでした? |
清水 | 細かいことでいえば、 移動が怖くなくなったってことですね。 ぼくらは試合があるので、どうしても、 海外にせよ、国内にせよ、 いろんな地域のいろんな部屋を、 転々としていくわけじゃないですか。 それは喘息の人にとっては ものすごいストレスなんです。 もう、つぎのホテルは どんなところかというだけで‥‥。 |
糸井 | 怖いですね。 |
清水 | はい。友達の家に泊まりに行くというだけで ものすごく気をつかってましたし。 |
糸井 | はいはいはい。 |
清水 | 若いころの友だちって、たいてい、 だらしなくて、部屋も汚くて(笑)。 |
糸井 | わかる、わかる(笑)。 |
清水 | 友だちの家に遊びにいくたびに 発作を起こして帰ってきたりとか。 そういうのが、ものすごく怖かったんですけど、 いまは、移動に対してのストレスは なくなりましたね。 |
糸井 | それって、すごく大きな変化ですよね。 |
清水 | それは、やはり、私生活において ものすごい広がりですよね。 |
糸井 | 心も変わりますよね。 |
清水 | はい。 |
(続きます) |
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2007-10-31-WED |
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