いいソファがそうであるように、
使っていて気分がよく、じょうぶで長持ちして、
部屋の一部として永くつき合っていける。
これまでありそうでなかったこのスリッパは
どんなふうにつくられたのでしょう。
企画したスタイリストの佐伯敦子さんと
「HIKE(ハイク)」の須摩さん、
そして実際につくってくださった
東京産業株式会社の丹羽さんに、
製作にまつわるエピソードを話していただきました。
使っていて気分がよく、じょうぶで長持ちして、
部屋の一部として永くつき合っていける。
これまでありそうでなかったこのスリッパは
どんなふうにつくられたのでしょう。
企画したスタイリストの佐伯敦子さんと
「HIKE(ハイク)」の須摩さん、
そして実際につくってくださった
東京産業株式会社の丹羽さんに、
製作にまつわるエピソードを話していただきました。
Ⅰ.ほしいスリッパが
なかったんです。
- ーー
- そもそも、スリッパをつくろうと
思われたきっかけは何だったんですか?
- 佐伯
- もともとは、私がずっとスリッパを探していたんです。
仕事で室内のシーンを撮るときにも必要だし、
家でもはき心地がいいものが欲しくて。
バブーシュやルームシューズも使いましたけど、
バブーシュって友達ならまだ大丈夫だけど、
目上の方に出すには、ちょっと恥ずかしい。
「お客さまがいらしたときに出せる
いいスリッパがないな」
と思ったのが最初のきっかけです。
昔は、各家庭にお客さま用の
スリッパが用意されてましたよね。
- ーー
- はい、ありました。
- 佐伯
- 人のお宅にお邪魔したとき、
きれいなスリッパが出てくると、気持ちがいいです。
そう思って探していたんだけど、
なんていうか「いまっぽい」ものがなかったんです。
高級旅館で使われている、
素敵な和風のスリッパも見つけたんですが、
それは今の洋のインテリアには
ちょっとなじまないな、と思って。
そういう話を須摩さんとしていたんですよね。
- 須摩
- そう。高級すぎたり、
過剰にデザインされすぎていたり。
オーソドックスで、でも丁寧につくられている
気の利いたモダンなスリッパが
「実はないよね」って。
- 佐伯
- 話しているうちに、
HIKEさんのインテリアファブリックを
つかったスリッパ、というものがあったら、
いい落としどころになるんじゃないかな、
という話になりまして。
それでいっしょにつくってくれる方を探そう、
となって、丹羽さんと出会いました。
- ーー
- 丹羽さんとは
どのように知り合われたんですか?
- 須摩
- 職人さんを検索したり、
各地に電話して
問い合わせたりしていたんですけど、
そもそも、昔ながらのやり方で
スリッパをつくっているところが少なかったんです。
東京で数件と、あと山形と。
模索しているなかで、丹羽さんと出会って。
- 丹羽
- お電話をいただいたんですよね。
私もはじめはどういうことなのかわからなくて、
「生地はある」とおっしゃるから、
既存の形のものをつくりたいのかな、
と思ったんですけど、
よくよく聞いてみると、
「型紙からおこしたい」というお話で。
- 須摩
- 丹羽さんは、
「1足からでもいいですよ」
と言ってくださったんです。
市場には大量生産のスリッパがたくさんありますが、
丹羽さんのところでは、
昔ながらの機械を使いつつ、
職人さんがひとつひとつ手づくりで
つくっているという話をうかがって、
いいな、と思いました。
- 佐伯
- 最初からとても協力的でしたよね、丹羽さん。
- 丹羽
- いやいやいや、
そんなことはないんですけど、
いまスリッパ業界も変わりどきで、
私も、いいものを丁寧につくる、ということに
特化していかなきゃいけないな、
と思っていた矢先でしたから、
タイミングがよかったんです。
- ーー
- 丹羽さんのところのスリッパは、
普段はデパートに卸されているんですか。
- 丹羽
- はい、主にはそうです。
ただ、昔はスリッパというと、
デパートでまとめて何足か買ってくださる
お客さまが多かったんですけど、
近年はデパートでの売り場も縮小傾向にあって、
ただたくさん並べておけば売れる、
ということでもないので、
売り場によっていろいろな工夫がされてます。
- ーー
- 完成までの間には、
けっこう試行錯誤がありましたか?
- 佐伯
- 何回ぐらいやりましたっけ。。
- 丹羽
- 4、5回やりとりしましたね。
お会いして、細かくメジャーで測って、
「この部分を5ミリ短く」とか、
「つま先のカーブを緩やかに」とか(笑)。
- 須摩
- すごいな、と思ったのは、
数ミリ変えただけで、
フォルムが全く変わるんです。
昔ながらのスリッパの型をベースに、
フォルムを整えながらつくっていくのが
一番いいんだろうなと考えて、
甲の大きさとか、中の素材とかを変えながら
何度もサンプルをつくっていただきました。
- 佐伯
- いちばん特徴的なのは、
甲にあたる部分の繰りの角度。
もともとはまっすぐだったんです。
- 丹羽
- この型紙を見ていただくとわかるんですけど、
直線だった部分を、これだけえぐって
カットしたんです。
けっこう変わったでしょう。
▲左が最初のもの。「まっすぐ」な線を
ぐっとカーブさせているのがわかります。
- ーー
- 確かに全然見た目も違います。
型紙ひとつでこんな変わるんですか。
- 丹羽
- これはあくまで
ぼくのイメージなんですけど、
甲のところが「まっすぐ」なものは、
海外でつくられる
大量生産のスリッパに多いです。
必要な生地の幅と長さが
簡単にわかるので、つくるのも楽なんです。
それと、技術的な話になりますが、
縫ったあとで甲を返すとき、
まっすぐだと簡単に返せるんですけど、
えぐれてると中心からの半径が全部違うので、
カーブに合わせて返す必要があって、
技術が必要なんです。
ここまで角度をつけたのは
はじめてでしたけど、やればつくれるんだ、
ということで、いい経験になりました。
- 須摩
- 横から見ると、きれいな曲線になりましたよね。
コントラストをつけたくて、
生地と生地の間に違う色を
挟んでみたり、
そういう試作も全部
丹羽さんが手作業でやってくださったんです。
- 佐伯
- あと、最初は底がもっと薄かったんですが、
クッション性をもたせたので、
はき心地が全然違います。
- ーー
- はき心地は重要ですよね。
特に普段使いだと、
疲れないことが重要な気がします。
- 丹羽
- 通常のスリッパは、
はくとパカパカするでしょう。
これは、ひと手間かけて
2ミリや5ミリのウレタンを入れてみたり、
最終的には低反発の素材を入れたりしながら
いまみたいに進化していきました。
はき心地も楽だし、1歩1歩が楽です。
それは底がフェルトだというのも関係してます。
空気を吸って吐くのと同じで
フワフワしてるし、
かといってそこまで柔らかすぎず。
スリッパ業界では、
一度フェルト底をはかれたお客さまは、
必ずまた次もフェルト底を買ってくださる、
という話があります。
- ーー
- へえ! そうですか。
- 丹羽
- ビニール底とフェルト底では全然違います。
フェルトもなんでもいいってわけではなく、
ウール100%のフェルトだと
かたくてカチカチになっちゃうんです。
これはウールが約70%、残り30%は別の素材です。
厚みは5.5ミリにしました。
- ーー
- 細かい部分にも気を配ってるんですね。
- 佐伯
- あまりにコンサバなスリッパにすると
HIKEさんらしくないし、
既存のスリッパとの住み分けで、
モダンにしたいという思いがあったんです。
シンプルだけれども、
こういうものを見つけようと思ったら
なかなかないと思います。
2020-04-06-MON
- 販売開始
- 2020年4月10日(金)午前11時
- 販売方法
- 数量限定販売
- お届け時期
- お申し込みから
3営業日以内に出荷(発送)