いいもので、いい時間をつくるシリーズ① 佐伯 敦子 × HIKE ソファみたいなスリッパ
「ソファみたいなスリッパ」ができるまで。「ソファみたいなスリッパ」ができるまで。
いいソファがそうであるように、
使っていて気分がよく、じょうぶで長持ちして、
部屋の一部として永くつき合っていける。
これまでありそうでなかったこのスリッパは
どんなふうにつくられたのでしょう。
企画したスタイリストの佐伯敦子さんと
「HIKE(ハイク)」の須摩さん、
そして実際につくってくださった
東京産業株式会社の丹羽さんに、
製作にまつわるエピソードを話していただきました。
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Ⅱ.はくことで長持ちします。

ーー
(実際にはいてみて)
これ、かなりフィット感がありますね。
須摩
従来の形は甲が浅めだったので、
はいたときに脱げやすいな、
と思ったんです。
歩いていて足の甲に当たっても
違和感を感じない深さがポイントだなと思いました。
佐伯
浅いものに慣れている方は、特に、
引っかかっちゃうような感じがするかも、と。
丹羽
でも、大丈夫でしたね。
ぼくも、あまり深すぎると歩き心地が‥‥
なんて最初は思ってましたけど、
「それは固定観念だったな」と、
つくづく思いました。
ーー
別の観点からいうと、
「包まれる感」があります。
佐伯
ホールド感はありますね。
それに、スリッパってサイズが
フレキシブルですよね。
丹羽
はい。スリッパって、けっこうアバウトなので、
「これじゃなきゃいけない」
というものがないんです。
余裕をもってはきたい人は、
ひと回り大きいものをはけばいいし、
ぴったりな感じが好きな人は、
小さめのものを買えばいいし。
ただ、昔、お相撲さんのスリッパを
つくったことがありまして、
既存のサイズだと入らないので、
サイズを測らせてもらったら、
右と左の足の大きさが1センチくらい違ったんです。
なので、右用左用をつくりました。
佐伯
スポーツ選手に多いですよね。
昔、バスケットボール選手の
撮影をしたことがあって、靴のサイズを聞くと、
「右27で左26です」って。
利き足が大きくなるんです。
一同
へええ。
丹羽
ちなみにスリッパは昔から左右がありません。
人の足の形は、
みなさん右と左で微妙に違うんですけど、
はいているうちに、
いつの間にか右は右足に、
左は左足に沿うように変化していきます。
そうすると、逆のほうをはいた瞬間に
違和感があるのではき替えたりします。
ちょっと沈んだり、型がついたりしながら
そうやって「自分のスリッパ」になっていく。
ーー
「自分のスリッパ」。
それは愛着がわきそうです。
須摩
特に中敷きをいいものにしたから、
より自分の足になじんでいく感じが
あると思いますよ。
ーー
丹羽さんに
工場のことも伺えれば、と思いまして。
手作業でつくっているんですか。
丹羽
機械で行う工程と、
手作業の工程と両方ありますが、
昔ながらの作業は
完全には機械化できないので、手作業が多いです。
たとえば四方八方に縫える
「八方ミシン」というものがあって、
これは縫う方向を変えながら縫うので
熟練の技術が必要です。
それから、のり付けも1枚1枚、
ちっちゃなローラーで調整しながらやってます。
何百枚もののり付けを高速でやるもんだから、
ぼくなんかは、見てて
ちゃんとのり付いてるのかなって
心配になることが何度もあるんですけど、
ちゃんとできているんです。
とにかく速くて、それはすごいですよ。
佐伯
職人ですね。
丹羽
70歳以上の方が何人もいまして、
みなさん20代からこの仕事をしてます。
ーー
50年のベテラン。
すごいですね。
丹羽
実はスリッパって、底を見ると
メーカーや流派がわかるんです。
「あ、この作りは、どこどこのだな」と。
スリッパ業界はもともとが徒弟制度で、
いまの年代が、最後の代です。
うちも、いまの職人の最高峰にいる方が、
徒弟制度の末裔です。
ーー
流派によって、違いってあるんですか。
丹羽
形もヒールの厚みも、全く違います。
スリッパの裏を見ると、
「ああ、どこどこでつくってるんだな」
と、すぐわかります。
佐伯
へええ! わかるんですね。
丹羽
いろんな特徴がありますから。
うちの特徴は、はき心地を
とにかく重視しているところです。
最初に買っていただいた方に
次も買ってもらうためには
どうしたらいいかっていうところで、
壊れづらく長持ちする商品をつくろう、
という考え方をしてます。
普通、逆ですよね。
早く壊れて早く買ってもらいたい(笑)。
ーー
確かに消耗品だし、
その方がもうかりますよね。
本当のことを言えば。
丹羽
ただそれは逆で、
生地もいいものを使って、
長持ちさせていただきたい、と思っています。
お客さんに浮気してもらってもいいんです。
他のところへ買いに行ってもらうと、
そうするとたぶん違いがわかると思うんです。
それで、また戻ってきてくれますから。
お手紙をいただくこともあります。
「いいスリッパをありがとうございます」って。
佐伯
へえ、すごいことですね。
丹羽
修理に来られることもあるんです。
「このスリッパにすごく愛着があるので、
底だけを替えられますか?」
という要望もあって。
だから、そういうことも対応しています。
佐伯
買った方が早い、という気もしちゃうけど。
丹羽
早いです。絶対早いんですけど、
お客さまが愛着を持ってはいてらっしゃるので。
ーー
直してでも使いたい方がいる。
愛着がそれだけ生まれるのはすごいです。
丹羽
今回、あたらしい形のスリッパを
つくらせていただいて、感じたのは、
長くはいていても疲れなくて、
長持ちしてっていうことになると、
結局こういうふうな形になってくるんじゃないかなあと。
生地自体も椅子張りじゃないですか。
すごく丈夫なんですよ。
ーー
椅子張り。
そのあたりのこと、もう少し伺ってもいいですか?
丹羽
ソファーやダイニングチェアに貼るために
つくられてる生地を椅子張りというんですが、
普通はカーテン生地を使うこともありますが、
ただカーテンは薄いので、
椅子張りの方が丈夫です。
須摩
あと、椅子張りの生地は
マーチンデールという磨耗度の
テストをしているので、
そのぶん生地が長持ちしますし、
使い込んだ良い風合いになります。
丹羽
そうですね。
かんたんに壊れることはまずないと思います。
ただ日本って四季があるでしょう。
半年置いて、1回タンスの中にしまって、
また半年出してはこうとすると、ダメなんです。
佐伯
劣化しちゃうんですか?
丹羽
空気が淀んでる中に放置していると、
空気中で酸化して、
のりが浮いてしまうことがあるんです。
生物と同じなんで、どうしても完成後すぐの
のりの状態がいいときに常にはいていると
空気が動いてますので、長くもつんです。
うちのスリッパを買うお客さんで、
「私じゃあ4足買うわ」
とおっしゃる方がいたんですけど、
そういうときは
「お客さま、4足すぐはかれますか」と聞きます。
すぐはかない、ということでしたら、
「それなら今日は1足だけで結構ですよ。
また次に必要なときに買っていただければ」
ということをお伝えしているんです。
ーー
はいてたら大丈夫って、不思議な話ですね。
丹羽
不思議なんです。
スリッパラックに朝から晩まで
置いておくだけでも、
太陽が東から昇って西に沈むのに合わせて
暑くなって冷えて‥‥と空気が変わるから、
ただ置いてあるだけで触ってないのに
のりが浮いてペコってはがれるとか、
黄ばんでたり浮いちゃったり。
それなら、
毎日はいていただいた方が長持ちはします。
佐伯
へえー。
今日から毎日はいてみよう。

2020-04-07-TUE

販売インフォメーション

販売開始
2020年4月10日(金)午前11時
販売方法
数量限定販売
お届け時期
お申し込みから
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