今回は、世代間闘争という
ちょっと刺激的な言葉がテーマです。
令和は世代間闘争の時代になるのでしょうか。



世代間闘争の時代 @

先日、首都圏の大学生にグループインタビューした。
集めた方法は「LINE」。
番組プロデューサーの娘さんを通して、
番組の趣旨や日時を呼びかけたところ
友達から友達にと回っていったらしい。

そんな方法で本当に集まるの? と
ぼくは密かに疑っていたのだけれど、
当日、会場に行ってみて驚いた。
急な募集にもかかわらず
男女合わせて16人もの大学生が集ってくれていたのだ。
しかも彼らの多くも、その会場で初めて会ったと言う。
そんな世界があるなんて
ぼくが学生のころには想像すらできなかったことだ。

全員に○と×の札を持ってもらい、最初に質問をした。
「今の生活に満足していますか?」
結果は、なんと全員が○をあげた。
彼らは首都圏の大学に通う学生たち。
恵まれた環境にいると言っていいのだろう。

しかし将来となると、話は別だ。
ある女子学生は言う。
「老後に対しての不安が強くて、
そもそも結婚できるかどうかもわからないし、
どうやって自分が死んでいくのかがわからなくて」
彼女のあまりの切実な声のトーンに
会場からどっと笑い声がわく。

社会に出る前から、早くも老後を考えていることに
私も驚いたけれど、彼女だけではなかった。
もうひとりの女子学生もこう話した。
「自分が子どもの夢を叶えてあげられるだけの
資金力があるのかとか、
もし、自分がおばあちゃんになって
働けなくなったときに、
支えてくれるだけの力を子供が持っているのかとか」

自分の若いころを思い出しても
なんとも表現しがたい漠とした不安を
抱いていたのを覚えている。
でもさすがに老後までは心配していなかった。


みんなに尋ねてみた。
「将来、きちんと年金をもらえると思いますか?」
16人中15人が×をあげた。
ある女子学生は、
「国の1千兆円の借金を考えると、
もらえなくなると思う」と漏らした。

さらに、ほとんどの学生が
「社会保障費は高齢者を優遇している」と考え、
全員が「もっと若い世代に回すべき」と感じていた。

彼らは上の世代にさぞ恨みを抱いているのだろう。
少しだけ挑発してみることにした。
「ぼくよりもっと上の世代と話すと、
こんな話題が出るんだけど、
これからは社会保障も、年金も厳しい。
国の財政も破綻するかもしれない。
俺の世代は逃げ切れるけど、
下の世代は無理だろうな、とか。
そう言う人たちをどう思う?」

「逃げ切れる、という言葉を使われると
単純に、ふざけるなよと思いますよね」
ひとりの男子学生が口火を切ると
他の学生たちも続いた。
「お年寄りはタンス預金とか言って、
たくさんお金を持っているのに、
若者にツケ回しをするのはおかしい」
「悔しいですよね。
こっちはいろいろ払っているのに、
逃げ切れるとか言って、厚い待遇を受けているのは
なんなんだろうな、と思いますよね」

今回のグループインタビューは
「世代間闘争」がテーマだった。
高齢者のドライバーによる事故で
若い世代が亡くなるケースが続いたことで
高齢者に対する若者の冷ややかな声が聞こえてきていた。
さらにこの国は様々な問題を先送りし、
若い世代にしわ寄せが行くのは避けられない中で、
若者たちが上の世代に対して
どんな思いを抱いているのかを知りたかったのだ。

さすがに、逃げ切れるという言葉に対しては
怒りの声も出たけれど、
総じて言うと、彼らは拍子抜けするほど
恨みなど持っていなかった。
年金については
「もらえないと言われて育ってきたので
そんなもんかと思うだけです」
と口をそろえるし、
1千兆円の借金とて
「上の世代には上の世代で、事情があったんだと思う」
と理解を示す。

前に、同じようなテーマで
街で様々な若者に話を聞いたときにも
恨みのような言葉はほとんど聞こえてこなかった。
それどころか、国には頼らず、
自分の力で稼ぐしかないと
覚悟を決めたような声が多かったのが
印象に残っている。

しかし世代間闘争の芽がないとは言えない。
ネット上で「#老害」(ハッシュタグ老害)が使われ、
広まっているというのだ。

(続く)

2019-05-31-FRI
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