ミュウゼ | 私の生み出した人間の顔は みんな、痛々しい顔つきなんです。 それが動物だと、ちょっとやわらぐ。 というか、こんなまじめな話 していいんでしょうか? |
南 | いい、いいです。 |
祖父江 | まじめ、いいです。 |
ミュウゼ | 私が動物ばっかり描いてるので、 ある方から 「動物なんて顔はなんでも同じでしょ」 と言われたの。 私はね、全然違うと思うんですよ。 |
糸井 | うん。 |
ミュウゼ | 動物ってわかりにくい。一瞬ではわかりにくい。 人はわかる。 少し突っ込めば内面やその怖さが 自分もわかるし、人も理解できます。 |
糸井 | うん。 |
ミュウゼ | だけど動物は、 特に、動物を好きじゃない人には 理解できないんですね。 好きであっても、突き詰めないと それほどはわからない。 私は動物を描いてるんだけれども、 まだもうひとつ、 わかんないところがあるの。 だから、描き終えた絵を床に落としても、 気楽なお友だちとしてかわいく見えちゃう。 怖い顔してても怖くなかったりする。 |
糸井 | うん、うん、動物はね。 |
ミュウゼ | だから人は描かないで、 動物を描くようになっちゃった。 |
糸井 | たしか祖父江さんが発注した絵も、動物? |
ミュウゼ | そう。あれがはじめてだったんです。 はじめて「仕事」で描いた動物の絵だった。 |
糸井 | おつきあい、長いんですか? |
祖父江 | かれこれ50年。 |
ミュウゼ | そんなことない。 |
一同 | (笑) |
ミュウゼ | 7年くらい前かな? 最初は装丁の仕事で、 突然お電話がかかってきたんです。 「祖父江ですぅー」って。 |
祖父江 | 前から絵が好きで、お願いしたいと思ってました。 でも、なっかなか そういう内容の本がなかったんですよ。 で、やっと、これだ! という 仕事が舞い込んできました。 |
糸井 | なんの本ですか? |
ミュウゼ | 高橋源一郎さんの 『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』 |
糸井 | あれが最初ですか。 |
ミュウゼ | はい。すごく印象深いです。 |
糸井 | そぶちゃんが 「こういうのを描いてほしい」 って言ったの? |
ミュウゼ | そぶちゃんはね、 あんまし注文は出さない。 |
南 | そうなんだ。 |
ミュウゼ | 「あのね、猫を、描いてますよねーっ、 それでいいの、それがほしいの」 |
祖父江 | みんな、ぼくのものまね、うまいよね。 |
ミュウゼ | 私ははじめ、電話で 「祖父江です」と言われたとき、 近所のね‥‥ |
糸井 | 優しそうな人だと。 |
ミュウゼ | そう、優しそうな‥‥変わった人だと。 街角とかでパンフレットとか配ってる 女の人かなぁと。 |
南 | ハッハッハッハ。 |
糸井 | それできっと、冷たい声出しちゃったんだ? |
ミュウゼ | そう! そしたら 「いやだぁ、装丁をやってる祖父江ですぅ」 もうちょっとで電話切るとこでしたよ。 それから何度かお電話いただいてますけど、 毎回「祖父江ですぅ」ってとこが 小さくて聞き取れないの。 だから私いつも 「えー?!?!?!」って、 すごくきつく対応しちゃうの。 |
糸井 | ギャルじゃありません。 |
南 | おとなの女です。 |
祖父江 | よく叱られます。 |
糸井 | でもそうやって7年間、こう、 愛し愛され、なさってきたわけですよね。 |
ミュウゼ | まぁそういうことでしょうか。 ほんとに、お仕事をいただいて‥‥ |
糸井 | 互いに磨き合い、高め合い‥‥。 |
ミュウゼ | そうですね、尊敬してます。 |
祖父江 | こっちが尊敬してます。 |
糸井 | 尊敬し合い‥‥。 |
ミュウゼ | ものすごく、困ったこととかがあると、 忙しいのがわかっているのにメールを差し上げて。 |
祖父江 | 「どんとこーい」って言いながら、 特に解決はしない。 |
糸井 | 困り合い‥‥。 |
ミュウゼ | 実に優柔不断な答えをいただくの。 |
糸井 | 批判ですね、いま。 |
南 | そうですね。 |
ミュウゼ | でもね、その、 どうにもならない言葉の中で ふっと解決するの。いつもよ。 |
(わかる気がしますよね、そぶちゃんのアドバイス‥‥。つづきます) |
2011-07-09-SAT |