妖精大決戦。
糸井 3人とも、ぼくを眠くさせる力があるよね。
ミュウゼ 眠いですか?
糸井 ぼわーっとなります。

祖父江 境界線が、いろんな方向に行くからね。
糸井 ひじょうにいいと思います。
ミュウゼ 寝ていただいてもいいですよ。
幽体離脱をぜひここで。
祖父江 わーわー(拍手)。
ミュウゼ 羽がつくんですよ。ふわあああ……ん。
糸井さん、やってんの?
糸井 出かけてきます。
(目を閉じる)

ミュウゼ なんとなーく、見えますねぇ。
羽の色が、最近ちょっと汚れてますよ。
祖父江 汚れてますか。

ミュウゼ ハッ、いやん、社長ちゃんに何てことを、
失礼いたしました。
祖父江 もうここにはいなくなりましたね。
ミュウゼ はい、いなくなりました。
祖父江 じゃ、このままそっと帰りましょうか。
ミュウゼ でも、伸坊さん。
伸坊さんにご紹介していただかなければ、
私はここにはいないんですよ。
糸井 すぅーっ。

祖父江 戻ってきた! ビックリしたーっ。
糸井 ちょっとだけ出てったんだけど、わかった?
祖父江 わかった。
ミュウゼ あげはちょうのような羽が出てましたよ。

でもさ、
祖父江さんをそんなによく知ってるんだったら、
祖父江さんに、
糸井さんを紹介してと言えば
もっと早かったのに。
ミュウゼ 私ってね、そういうこと
言わない性格なんですよ。
そうだね。
祖父江 だね。
ミュウゼ 糸井さんのことを、
伸坊さんに、雑談で聞いたんですよ。
だけどこんなにも糸井さんと
お親しくってご親友だなんて、
思ってなかったの。
その話はおもしろいから、していいですか?
祖父江 はい。
ミュウゼ つまらないかもしれないですけれど、
ちょうどいま幽体離脱になって‥‥
糸井 戻ってきたばっかりですから。

ミュウゼ 伸坊さんにお会いしたのは、おもに
TISの、審査なの。
うん。
糸井 TISって何?
東京イラストレーターズソサエティ
ミュウゼ 私なんかが
東京イラストレーターズソサエティの
審査員に選ばれちゃってて。
糸井 ちゃってて。はい。
ミュウゼ そこがね、なんだか意外に、
男の人ばっかで、話しにくい。
だけど伸坊さんて、わりに有名人でしょう?
この巷で。
この日本という現世で。
日本という現世で(笑)。
ミュウゼ とにかくあまりに有名人なものですから、
みなさん気楽に話しかけないんですよ。
ところが私はね、
そういうのがないから。
糸井 伸坊、孤独の有名人。
ミュウゼ こんなにもいい方なのに、
ちょこっとホサれちゃっててね。
一同 (笑)
ミュウゼ いやいや、そうじゃなくて
恐れ多くてね。
だけど私はちょっと抜けてるから、
話しかけちゃうんですよ。
そうしたら、
すごく感じのいい方で。
ぼくはね、そのTISってのに
当時は入ったばっかりだったの。
だから周りが全部先輩なわけですよ。
ミュウゼ 謙虚ねぇ。

いや、実際にさ。
(安西)水丸さんとかなら知ってるけど、
ほかの人はあんまり知らない。
有名な人はいっぱいいるんだけど‥‥つまり、
イラストレーターって、絵を見ればわかるけど
顔は知らない人ばっかりじゃないですか。
祖父江 はい、はい。
それで、和田(誠)さんとか、
宇野(亜喜良)さんとか
そういう人たちは
もちろん顔も知ってるんだけど‥‥。
ミュウゼ シモジモは知らない。そういうことでしょ。
糸井 人にはきついね。
祖父江 厳しいですね。
ミュウゼ 伸坊さんは、偉い人を知ってるの。
だから、なんとなく
話をする感じじゃなくてね。
糸井 うん、うん。
ミュウゼ そこへもってきて私がくだらないことを。
糸井 ミュウゼが。
ミュウゼ ミュウゼが。
「ねえねえ、こういうこと知ってる?」
って、くだらない、
逸話みたいなことを。
糸井 そりゃさぞかし
くだらなかったでしょうね。
ミュウゼ それがね、
おもしろそうに笑ってくださるの。
糸井 ま、癖ですから。

ハッハッハッハッハ。
ミュウゼ 笑ってくださるから、私、調子に乗っちゃって。
「こないだ、こんなことありましたよ」
「こんなこと、ブログに書いちゃって、
 これはいいんだろうかどうだろうか」
そのノリで、
「私はいつもほぼ日を見てて、
 将来の夢は何かというと、
 当面は、ほぼ日に載ることよ」

糸井 将来の夢が当面‥‥。
ミュウゼ いつか「ほぼ日」で
コンテンツとして載せてもらえたとしたら、
それは夢よねー、というふうに
しゃべったんですよ。
ええ。
ミュウゼ そしたら急に「紹介しよっか」と
言ってくれて。
糸井 俺、伸坊に紹介された人って
はじめてですから。
そうね。
ミュウゼ べつに紹介してください、って
頼んだわけじゃないのに、
夢を言っただけなのに。
でも「夢」っていったら、ねえ?
糸井 「目を覚ませ」と言うか、
「紹介しましょう」と言うか、
どちらかでしょう。
ミュウゼ あ、そういえば、そうね。
そのどっちかよね。

祖父江 あ、おいしいー!
(テーブルの上にあったしょうがチップをつまむ)
ごめんなさーい、
それで、それで?
ミュウゼ それで、え‥‥
何しゃべってるかわかんなくなっちゃった。
(しょうがチップをつまむ)

祖父江 えーっと、紹介してあげよっか、と言われて、
それから?
ミュウゼ そうそう、だからね、
糸井さんと伸坊さんの
『黄昏』という本があるんですけど、
ほんとうにおふたりがああいう感じなのか!
と思って
してください、してください、
ぜひぜひ紹介してくださいって言ったんです。
でも私、そのときも
半信半疑でした。
そういう話って、よくありますし、
とってもいい方だとは思っているけれど、
伸坊さんて、私の絵を
見てないと思ったんです。
祖父江 もう、あっちこっちで
「紹介してやる」とか言ってる人で。
ミュウゼ そうよ。
糸井 南さんは、ミュウゼさんの絵は
ご存知ではあったんですか?
うん。
ミュウゼ え?
見てらっしゃるはずがありません。
糸井 見てたの?
もちろん。
糸井さんが好きそうだと思ってたから
紹介したの。
ミュウゼ しばらくして糸井事務所から連絡が来たんですよ。
焦っちゃった、
ほんとだー、マジかー、みたいな感じ。
祖父江 マジかー。

ミュウゼ もう長いこと、作品のファイリングなんか
したことないのに、
緊張しちゃって、いそいでファイリングしました。
糸井 あ、ファイリングしたことないの?
ミュウゼ ずーっとなかったです。
売り込みなんて全然してこなかったですから。
ほとんどはじめてですよ、ほとんど‥‥。
いや、正確にいうとはじめてじゃありません。
実は「もう2度と自分の絵を見せに行かない」
という事件が、過去にあったのです。
(どんな事件?! つづきます!)
2011-07-10-SUN
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