谷川俊太郎の『家族の肖像』。
谷川俊太郎さんが、谷川賢作さんとつくった
詩と音楽のCD3部作の、
最後のテーマに選んだのは、「家族」。
半世紀をかけて言葉をつむいできた谷川さんの
魂が浮き彫りになるような、そんな作品になりました。
人生でいちばんだいじにしているものは何かと訊かれたら、
谷川さんは「やっぱり家族」と答えるそうなんです。

「谷川さんに、何が伝えたいかって、
『えらい仕事しちゃいましたね』
ってことばかりなんです」
CD『家族の肖像』について、こう語るdarlingこと糸井重里。
東京のメトロマガジン「メトロミニッツ」によって実現した
谷川俊太郎さん、賢作さんとの鼎談を、特別に
「ほぼ日」で全文掲載用に編集しなおし、
7回の連載でお届けします。
詩のこと、音楽のこと、家族のこと。
どうぞたっぷり、おたのしみくださいね。

『家族の肖像』鼎談 第7回
いてよかった。



糸井
賢作さんは、レコーディングのときに
谷川さんのことを褒めたりするんですか?

賢作
ボソッとしか(笑)。

俊太郎
OKは出してもらわないと困るんだけど
過剰に褒められたらさ、ちょっと困るよ。
「良かったよ」ぐらい言われると、
やっぱりうれしいけど。

賢作
音楽のテイクだと、いいか悪いかが、
微妙な差異に入って、
「サビ、ちょっとまったり感」
とか言えるんだけどさ(笑)。

糸井
うん、うん。


俊太郎

詩の場合は、自分でやってて、
ほんとはもういっぺんやったほうがいいんだけど、
もういっぺんやってよくなるようなことは
ありえないかもしれないから、
もうこれでいいや、みたいなことはよくあるよ。
ものすごい微妙だから。

一行の間の取り方が、0.5秒の違いでも、
ほんとはこれはこうじゃないほうがいいかも、
みたいなことを考えちゃうから、
たぶんきりがなくなるね。
きりがなくなってくと、
だんだんエネルギーが落ちてくから、
できるだけファーストテイク、
セカンドテイクで決めたいというかんじです。

糸井
詩のリーディングって、
テクを語っちゃいけないような気が
してくるんです。
音楽だと、テクニックを語ってもいいですよね、
ミスタッチとか。

賢作
そうなんですよ。

糸井
詩は、これを言ったら僭越かなぁ、
みたいに思わせるものがある。
でも、話芸の達人たちは、
そういう磨き込みを
きっとやってきたんでしょうね。

俊太郎
うん、そうだと思うし、
詩も、それはけっこう
やれると思うんですよ。

糸井
これからも谷川さんが何回も
チャレンジをしていったら、
もしかしたら、ある「域」が
見えてくるのかもしれないですね。

俊太郎
そう、なんとなく、そっちへ向かってるよ。
それがいいことか悪いことか、よくわかんない。
詩の場合は、あんまりうまくなりすぎると、
まずいんじゃないか、とも思うけど。

糸井
答えはまだ見えないですね。

俊太郎
見えないね。

糸井
上手くなったら
まずいんじゃないかとも思うんだけど、
上手くなれるんだとしたら、
そこにまた新しい地平が
見えてくるんじゃないかなと思います。

ところで、男性のなかで、このCDを聴いて、
家族って「ドーン」と重い
と感じる人もいるみたいですね。

俊太郎
それでみんな
結婚したがんないんだな?(笑)

糸井
なんだか、谷川さんに子どもがいるってこと自体、
不思議ですよ。

俊太郎
えぇ!? そぉ?

糸井
うん。よく、つくる機会があったな、
っていうかね。

俊太郎
つくる機会は、夜がくれば(笑)。

糸井
なんかね、つくらないままになっちゃった、
っていうふうな人生が、
あると思うんですよ。

俊太郎
うん、もちろんありますよ。
僕の友だちなんかも、そう。

糸井
ですよね。
だけど、こうやってちゃんと
いらっしゃるじゃないですか。

俊太郎
僕、だって、子ども欲しかったんですもん。
ひとりっ子だったから。

糸井
ああ、なるほどな。

俊太郎
ほんとは大家族志向だったんですよ。


糸井

そういうとこが僕とすこし似てますね、
自分についても、よく「いたな」って、
思うことがあるんですよ。


俊太郎

うん。

糸井
よくいたな。
いたほうがいいですよ、それは。

俊太郎
みたいですね。

糸井
うん。子どもがいたら、グズグズしますよ。
啖呵とか、切りにくくなります。


賢作

うん、うん。


糸井

なんでぇ、とか。
入れ墨とか見せらんなくなりますよ。

賢作
うはははははは。


『家族の肖像』鼎談は、これでおしまいです。
ご愛読ありがとうございました。
これからも「ほぼ日」は、CD『家族の肖像』を
応援していきます。
谷川俊太郎さん、賢作さんへのメッセージは
メールの表題に「家族」と書いて
postman@1101.comに送ってくださいね。


谷川俊太郎さんと谷川賢作さんのCD
『家族の肖像』は
レコード店などで発売中です。

【Amazon.co.jp】でもお買い求めいただけますよ。
CDの内容の詳細は、
サイレント/ポリスターレコードのサイト
ごらんくださいね。

↓家族の肖像募集写真エンドロールは、こちら!

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