ほぼ日刊イトイ新聞プレゼンツ モノはコトなり、コトはモノなり。 そしてコトバは、すべてをつなぐ。 |
今週の商品は讃岐うどんの最高峰とdarlingが絶賛する、 日の出製麺所のうどんセットです。 調理のコンディションがあまりよくない TBSラジオを飛び出て、 ほぼ日乗組員が日々仕事をする明るいビルで、 おいしいうどんを作りながらの収録となっています。 とにかく食べるのも作るのも大好きな ほぼ日ダイニング部も大活躍。 おいしい音とともに、ぜひお楽しみください! 放送は火曜日〜金曜日の21時35分〜 TBSラジオ(AM 954) (「mix」(ミックス)という番組内で放送されます。 放送開始時間は若干変更となる可能性があります) ラジオを聴くことができない方のために、 放送終了後にTBSラジオのGOODS JOCKEYのページで 聴くことができるようになっています。 聴いていただいた感想やご意見は gj@1101.comまでぜひお寄せください。
先週放送された「100万分の1グラムの歯車」に ゲストとしてご登場いただいた樹研工業代表の 松浦元男さんの話、聴いていただきましたでしょうか。 放送終了後も松浦さんとdarlingの話は ヒートアップしていきました。 今週は放送終了後の話しをお届けします。 (放送のダイジェストもぜひご覧ください) 【放送された内容のダイジェスト】 ※2月11日 世界一小さい歯車の話は 日本にパワーを与えてくれます! ※2月12日 目指すのは金メダル! 世界一の歯車はこうやってできあがった。 ※2月13日会議自由参加、定年なし‥‥ 世界一の中小企業はこうやって動いてます。 ※2月14日 世界一の歯車の次は‥‥? 中小企業だからできることはこんなにある! ●技術がしっかりしていれば、 値上げもできます。 糸井(糸井重里) ナマ声で聞くと、本に書いてあることと同じでも、 ビーンってきますね。 松浦(松浦元男さん) トータル的にいいますと 90年代でウチは会社が伸びたんですよ。 仕事の実質はどうかというと減ってるんです。 金型なんかはだいたい30%ぐらい 生産個数落ちてるんです。 プラスティックの成型も、 だいたい部品の数は3割ぐらい落ちてるんです。 だけど売り上げ落ちてないんです。 なぜか。実は値上げをしたんです。 技術がちゃんとしていれば、世界的に残るんです。 糸井 それしかないからですよね。 松浦 そうなんです。嫌ならよそへいってください、と。 それで終わりですから。 フィルムの時代はカメラのメーカーさんが ぜんぶウチのお客さんで、タクサン仕事があったんです。 それがデジカメになってなくなっちゃって‥‥。 糸井 部品が違っちゃったんですよね。 松浦 ええ、部品があらへんもんね。 「しょうがないわな、これが世の中だ」って諦めてたら 去年の夏ごろからまた増えてきたんですよ。 なんだと思ったらみんなズームになったんですよ。 ズーム機構っていうのは、ひじょうに精度がいるんです。 糸井 またメカニズムになったんだ(笑)。 松浦 みんな、カメラを中国で作ってるんですけど そのズーム機構の部品がどこも作れないんです。 結局日本の僕らのところに戻ってきたんです。 気の毒だけど 戻ってくるとだいたい値上がりしますわ。 ほぼ日 松浦さんが書いた本の中に見積もりを 何回か取られてるうちに、 どんどん値段をあげていったっていう話が ありましたよね。 松浦 そうそうそうそう(笑)。 ま、腹が立ったからやったんですけどねぇ。 糸井 わざとですよね(笑)。 それが通用するのが可笑しいですよね。 松浦 大企業の購買の方たちが、 マーケットを知らないんです。 だから「そんなんだったらおまえのとこ頼まないわ」 っていって、持ち出して、 他へ持っていったらどこもできなかった。 しょうがないからまた頼みにきた。 また頼みにくるときには彼らは、 いつでも値下げを考えてるんです。 僕らは何回かくれば、値上げしか考えてませんよ。 はじめの見積もりより価格が 結局35%ぐらい上がっちゃってね。 糸井 はぁ。それ、大きいですねー。 松浦 そのとき初めてわかったんですよ。 3割値上がりすると仕上がり3分の1になって、 そっちのほうが儲かるんですよね。 それでもう値上げに凝っちゃってね。 なるべくわからんようにやったほうがいいぞ、 ということで、ぶちぶちぶちぶちやってるうちに、 この間、調べたら‥‥。 糸井 大流行!(笑) 松浦 もう流行っちゃって(笑)。 中部電力の請求書見たら、 電気料金の請求書少ないんですよ。 「なんでこんな少ないんだ」っていったら、 「いや、だって社長、今、精機は百台ぐらい 減ってますよ」っていうの。 「金型はどうだ?」って訊いたら、 いちばん多いときには、950ぐらいで、 今600がいいとこですよ。 「だけども売れ行き減ってないじゃん」 「そりゃ値上げしたんだもん、簡単ですわ」 「それはいいことだね」って(笑)。 その先がウチはあるんですよ。 「それだけ努力したんだから、 今年のボーナス増やしましょう」って言われて(笑)。 「それもそうだね」って、やったんですけどね。 糸井 それがいつでもできる人数っていうのは、 今の人数でいっぱいですか? 松浦 そうなんです。 僕の器ではだいたい70名から100名ぐらいが 中小企業のいちばんいい人数だと思います。 糸井 別の人なら別だってことは、あり得ますか? 松浦 人によって違うと思いますね。 50人がいちばんいいって人もいるだろうし、 岡野さんなんか 「絶対に10人以下じゃないと嫌だ」っていってます。 僕らが見ていると今の企業っていうのは、 100人越したら、面白くないです。 結局、ソニーにしろ松下にしろ社員が全世界で 何十万人でしょう? そうすると、どこでどんな間違いが起きてるか わからないんです。 病院のいろんな事故なんかも、大きな病院だけでしょ? 近所のお医者さんが、患者を間違えて 注射を打つなんてことは、絶対にあり得んもんね。 樹研工業代表 松浦元男さん ●ISOは道路交通法にしかすぎない。 運転の仕方は自分で学ばないと! 松浦 僕らはISOのことはあっちこっちで、 ボロクソに言うんですけど、 ISOの要求してることが駄目だと 言ってるんじゃないんです。 あの程度のことは、もう30年前からやってるんです。 それを昨日や今日始めた人が、 教えてやるから金払え、って言われてもね‥‥。 糸井 高いんですって? それが。 松浦 僕はISOを取る気にならないんだけど、 自信のない大企業の人が、 みんな、なびいちゃったんですよ。 社員が10万人ぐらいいる自動車部品のメーカーさんが ISOを取っているんです。 そこの下請けさん、約千社も全員取っていて、 ウチだけ取ってないんです。 でも過去10年間調べたら、 不良品が全く入ってないの、ウチだけなんです。 他はみなさん不良品を納めてるんです。 そこの部長さんが面白い人で 「なんでそうなったか、ちょっとあんた、 社内で講演してくれんか?」って(笑)。 そこの社員500人ぐらいと、 外注さんが約400社集まって どうして不良品が出るかってことを説明したんです。 ISOのルールブックは、道路交通法なんですよ。 だから、道路交通法をいくら勉強しても、 運転は上手くなりませんよ。 運転が上手くなる、自動車レースで優勝するためには、 最高の車を買って、 最高のメカニックが最高の状態に調整して、 ドライバーが最高の技術を持った人が乗って、 はじめてレースに参加できるんです。 まだ優勝の保証ないんです。 それをISOばっかり、 道路交通法ばっかり一生懸命やったって、 何のためにもならんですよ。 第一、道路交通法なんていうのは、 せいぜい車は左側通れとか、 信号赤になったら止まれとか。 ISOを取っただけで、すべて事成れるというふうに 安易に考えることが間違いでね。 そうじゃなくていいものを作るにはどうしたらいいか、 ということをキチッと考えれば、 そうはならないと思いますよ。 ●技術をちゃんと評価できる会社、 できない会社。 糸井 松浦さんの本を読んで面白いと思ったのは、 各家電メーカーのことを、セットメーカーって 言ってますよね。 僕たちは部品をセットして自分の会社の名前を付けて 売ることを、電気屋さんだと思ってるわけです。 彼らが作ってると思ってたんだけど、 あれは買ってきてセットする会社なんですよね。 松浦 セットするだけなの。 だから仕事が中国に行っちゃうんです。 日本人と中国人と、顔見るとあんまり変わんないでしょ? 日本であまりにも簡単にいい部品が買えるもんだから、 だから日本人の購買の方たちが、 中国でもおんなじものを買えるということで 大失敗して、みんな大赤字になったわけですよ。 糸井 金型で、20万回大丈夫だっていうヤツは、 3回で壊れるかもしれないけど、 200万回大丈夫なヤツは‥‥。 松浦 201万回までは絶対壊れない。僕らのヤツはね。 だから中国で20万回はもちますよっていうのは、 それは運が良ければ20万1回目に壊れる。 運が悪いと3回目に壊れるんだよね(笑)。 そういう歴史っていうのは、 ずーっと僕らも踏んでますから‥‥。 糸井 かつては日本もそうだったってことですよね(笑)。 松浦 うん、かつてはそういうのを作ってたんですよ。 日本は、製造業に適する国でね。 どうもそうやって見ると、 日本とイタリアとかドイツとか、 スウェーデン、スイス、フランスの一部、 このへんだけですね、面白いのは。 糸井 やっぱりヨーロッパにいきますね。 松浦 あの人たちは僕らよりもうひとつ凝ったことをやる。 日本の大企業さんで、 今、知的労働に対して評価して、 お金を払おうという会社は、 僕らの付き合ってる中では愛知県のデンソーと、 静岡県の矢崎だけですね。 あと、ヨーロッパのメーカーは その場で「お幾らお支払いしたらよろしいでしょうか。」 って訊いてきます。 それに対して、日本のある大手のメーカーは パソコンのCDが回るところの、 ギア音がして、どうにもならなくて、 ウチへ頼みにきました。 ウチでぜんぶ設計し直して、直してあげたんです。 そしたら偉い人が4、5人団体で来て、 「大変お世話になりました。 この埋め合わせは将来必ずいたしますから。」って。 もうその人は定年でいないわね。 糸井 その技術を持っているということは ものすごい弁護士を雇ったのと 同じことなのにねぇ。 ●技術開発はとことん続けていきます。 糸井 よく訊かれるでしょうけど、 松浦さんという個人がいなくなったときには、 どうなるんでしょうね? 松浦 いや、国内もだけど、海外の会社も だんだんジュニアが出てきたりしてね。 ジュニア同士が仲いいんですよ。 糸井 なーるほどなぁ。親族会みたいになって(笑)。 松浦 そうそう、だんだん親戚付き合いになっちゃって。 面白いもんですねぇ。 糸井 縁が薄くなったら、その時はその時のことですね。 松浦 そうそうそうそう。 どういう時が縁が薄くなるかっていうことを、 ちゃんとわかってるし、決めてあるんですよ。 ウチの技術開発力が止まったら、絶対離れますね。 海外の合弁会社には 「おまえさんたちがマーケットのアクセスが 弱くなったら、俺のところは切り捨てるわ」と 言ってます。 糸井 なるほど(笑)。そこはクールですよね。 松浦 ええ。だからお互いに切り捨てられないように、 我々もとことん技術開発をしていくし、 海外の合弁会社は徹底的に、 マーケットをアクセスしていい仕事を持ってこい、 ということなんです。 お互いの経営はいっさい干渉しない。 技術料はいっさい取らない、 配当はいっさい要求するなとも言ってます。 不労所得は、ダメ。働いた所得だけ! 糸井 ぜんぶ、見えるかたちに変えてくってことですよね。 松浦 そうです。やっぱり見えないとダメですね。 情報を公開するっていうのは、 とっても大事なことだと思うんですよね。 糸井 ものすごい重要ですよ。 松浦さん、また会いたいです。 松浦 ぜひ。 糸井 会社にお伺いもしたいです。 松浦 いつでも、あの、お時間ございましたら。 糸井 ぜひ、よろしくお願いします。 面白かったー。ありがとうございました。
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2004-02-17-TUE
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