常設展示室の13のブースと、
企画展示室をゆっくりと回ったあと、
中庭のベンチやカフェ・タンポポでひと休み。
そのあとまだ公開されていない収蔵品のある
収蔵庫をご案内いただきました。
(いつか公開される時まで、こちらはお待ちくださいね。)
伊丹十三記念館を、ぐるっとひと回りし終えてからの
中村好文さんと玉置泰さん、糸井重里の話を
3回に分けて、ご紹介します。
中 村 | 来館者の中には、 わりとスーッと帰っちゃう人もいて、 何も見てないみたいな人もいるんですよ。 不思議なんだけどね。 一方で、見る人は何時間もいたりとか、 何回も来る人もいる。 不思議ですよね、そういうの。 |
糸 井 | 多分、見ると読むの違いでしょうね。 美術館とか博物館っていうのは、 読み始めたらいくらでも読めますし、 見るだけだったら、 そのままのスピードで行けますから。 |
中 村 | 結局、その展示物の中に 自分の何かと呼応するものを 読み取るっていうことだから、 それがない人はもう サッと見て、この記念館、 見るものがない、みたいになっちゃうのね。 結局、自分の中に展示物に 感応する力がないってことなのに。 |
糸 井 | 僕は伊丹十三記念館は、 すごい徹底して 「読み物の記念館」だと思いますよ。 |
中 村 | あ、そうだと思う。 うん、たしかにそうだと思う。 |
糸 井 | なんで? って思ったら、 すべてに理由があるし。 伊丹さんがそういう人だったし。 |
中 村 | そうそう。そうですね。 そういうことなんだ。 |
糸 井 | あの木の話も、最初に聞いておいたら 見方が変わると思うな。 それは同時に 宮本さんを喜ばせるものでもあったし。 見事にあそこ、象徴してると思うな。 |
中 村 | その建物を象徴的に表すものって、 やっぱり欲しいんですよね。 |
糸 井 | それが生き物だったのはよかったですよね。 |
中 村 | それから、記念館に来た人が、 見学の印象を人に語れる何かを 用意しておいてあげたいっていうことも ありました。 「十三饅頭があったんだよ」 っていうことでもいいし、 何かそういうものがやっぱり要るんですよね。 とても何かこう、印象に残って、 それがちょっといい話として人に伝えられるものを 用意しておくべきなんですよね。 なんかサラッと通りいっぺんに 作ってしまわないで。 |
糸 井 | 馬小屋と木はすごくいいんじゃないですかね。 |
中 村 | このパンフレットなんかも、 貰っておもしろがる人は 相当おもしろがってくれます。 普通じゃないですからね。 |
玉 置 | ここまでやるかっていう。 |
中 村 | 途中から玉置さんは、 「いい加減にしてくれ」みたいな感じでしたね |
玉 置 | いや、そんなことないですよ。 |
一 同 | (笑)。 |
中 村 | グッズにまでズルズルズルズル 入り込んでいきましたからね、ぼくが。 「やっぱりね、張り子の犬は 作ったほうがいいかな」とか言い出してさ。 あれはもともと浅草で作ってたものだから、 浅草だったらあるだろうと思って探したら、 職人がみんな廃業しちゃってたんですよ。 そうしたら、偶然に 作ってくれるところが会津で見つかって。 それで絵を送って、色を指定して、 「同じにしてくれ」って。 そうやって作ったんですよ、あれは。 |
糸 井 | はあ〜(笑)。 |
中 村 | 「ナカムラサン、 そんなことしてる暇あるんですか?」 ってスタッフが言うんだけど(笑)。 |
糸 井 | いや、それは伊丹さんでも やったことですよね。 |
中 村 | そうですね。きっとそう思う。 |
糸 井 | もう、だって、 「やあ、いらっしゃい」から 跡継いでる感じするよね。 いや、僕はここ、 徹底的に「読む記念館」だと思うな。 素晴らしい立体の「読む記念館」。 映画も、伊丹さんの映画って 「読む映画」だったし。 |
中 村 | 伊丹さん自身が 読む人だったんですものね。 |
糸 井 | そうですね。笑っちゃうのは、 テレビのところでさ、 やたらに寝転んでたじゃない、あの時? |
中 村 | ズルズルと(笑)。 |
糸 井 | あれも、時代へのあてつけですよね。 これからはこうなるんだよ、みたいな。 ああいうところの、 そのケレンがいいんだよね。 |
中 村 | うーん、ありますねえ。 それはすごく強くあります。 |
糸 井 | やっぱりちょっと過剰に出しといて、 自分はスッと引いていくんですよね。 後で寝転んでるやつ見ると、 「まだそういうことやってるの?」 って言いそうな(笑)。 |
中 村 | (笑)そうそう。きっと言うと思う。 |
糸 井 | いやあ、手に負えないわ(笑)。 |
中 村 | ああいうことを堂々とできたのが偉い。 そういうことを 「これでいいのだ」としたんでしょ。 |
糸 井 | 「しょうがねえや」で行かせちゃうのって、 実力ですよね。 |
中村好文さんが案内してくださった |
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(おわります) | |
2009-10-21-WED |
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図版:トリバタケハルノブ