秋の始まりというよりも
まだ夏の名残がつよく残る日、
伊賀の土楽窯を訪れました。
日々「ほんとにだいじなカレー皿」と
土鍋の「ベア」シリーズの作陶に明け暮れるなか、
福森道歩さん、柏木円さん、福森雅武さんが
その手をとめて、料理をふるまってくださいました。
「ほんとにだいじなカレー皿」の
使い方のヒントになりそうな写真を
たくさん撮ってきましたよ。
どうぞ、ごらんください。
ゴーヤとなまり節のちゃんぷるー、ベイクトポテト、
青梗菜と生きくらげの炒め物、いわしの梅煮。
ベーコーンチャーハン、梅納豆チャーハン、中華冷麺、
セロリと牛肉の中華炒め、
フルーツトマトぶっかけうどん、イカ天稲庭冷やしうどん。
ゆで豚・おうちラー油ソース、赤ずいきのお浸し、
かんたんひつまぶし、鶏手羽のカレーの恩返し揚げ、
三種の芋サラダ。
茄子と厚揚げの冷やし炊き合わせ、冬瓜冷製スープ、
棒棒鶏、金糸瓜のサラダ、土鍋カレー。
豚肉豆腐、しら玉丼、てんぷらそうめん、
帆立貝のそうめん揚げ、かつおのたたき。
「カレー皿が、焼き上がりましたよ」
という連絡を受けて、
ひさしぶりに、伊賀の土楽窯を訪ねました。
暦の上ではもう秋だというのに、
まだまだ日差しが強かった取材の日。
近くの田んぼでは、実った稲がこうべをたれて、
収穫の日を待っていました。
調理は、作陶のかたわら、
プロフェッショナルの料理人としても活躍している
福森道歩さんを中心に、
うつわづくりの腕はもちろんのこと、
食いしん坊と料理に関しても
「さすが姉妹!」といつも驚かせてくれる
姉の柏木円さん、そしてふたりの父親であり、
土楽窯の七代当主である福森雅武さんが
それぞれ、競い合うように担当。
たくさんの料理をつくってくださいました。
3人とも「思いつき」で調理をすすめるので、
くわしいレシピが紹介できないのが残念ですが、
「カレー皿って、こんなふうに使えるんだ!」
という、まいにちの食卓のヒントになったら幸いです。
「料理がじょうずだから、器に映えるんでしょう?」
とお思いかもしれませんが、それだけじゃありません。
この「ほんとにだいじなカレー皿」って、
(まあ、あまりこういうことは言いたくないんですが)
買ってきたおそうざいをちょこんとのせても、
じつに様になっちゃう、すごいお皿なんですよ。
ちなみに3人ともお酒が大好きなので、
「おつまみ」が多いようにも思いますけれど、
試食させていただいたかぎり、
いずれもごはんにぴったりでした。
福森家の広い庭には菜園があり、
そこでお母さんがいろいろな野菜を育てています。
無農薬で丁寧に育てたゴーヤと、
高知から届いた柚子風味の「なまり節」を使って、
道歩さんが沖縄風の炒め物
「ちゃんぷるー」をつくりました。
なまり節をちゃんぷるーに?!
と、ちょっと驚いたんですけれど、
その旨味が苦いゴーヤとよく合うのです。
「ビールが進む事請け合いですよ!」と道歩さん。
使っているのは「灰釉」のカレー皿です。
つづいては円さんのベイクトポテトです。
厚切りにしたベーコンを、こんがり。
そこから出た脂で、茹でておいたじゃがいもを、
鍋肌で焦げつけるように(でも実際は焦がしません)
焼いた料理です。
シンプルなだけに、
ベーコンとじゃがいもの素材のよさが肝心。
盛りつけのポイントは、
中心に向かってならべたベーコン。
ほんのちょっとの気働きで、
こういったかんたんおつまみも、
一品料理の風格が出ます。
ちなみに薄いみどり色が「灰釉」、
黒色が「アメ釉」。
ちょっとだけアメ釉のほうが、洋風に見えますね!
刻んだイタリアンパセリの色も、きれいです。
黒く光るアメ釉に、卵の黄色、青梗菜の緑が
ほんとうによく映えています。
こんなふうに色あざやかに調理するコツは、
まずとき卵を、熱く熱したフライパンで
油多めにしてさっと火を通し、取り出しておくこと。
豚肉、野菜を炒め、最後に卵を戻して軽く和えるそうです。
そうすることで、卵の黄色が色鮮やかになり、
黒の器の中でぐっと色合いを増してくれるんです。
余白のうつくしさです。
ときには、こんなふうに量を盛りすぎずに、
「中央にちょこん」と並べると、じつに上品で、
どこかの割烹のような印象が生まれますよね。
梅干しの赤と、刻んだ針しょうがの黄色が
灰釉の皿に似合います。
斜めからさす光でできる陰影もうつくしい。
これぞにっぽんの食卓だなあと見とれちゃいました。
(次回につづきます)