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March
ある日の日記(12)

色が気に入ってロンドンの毛糸屋で購入したヤーン。店主の女性が自ら紡いだのだそう。

昨年の秋ごろから、私はにわかに編み物に目覚め
ご近所の編み物好きが集まる不定期開催の編み物の会に入って
イギリス人の先輩ニッターに混じり、
初心者向けのガーター編みマフラーなどを作っている。

大学時代に京都の和菓子の工房で
何千羽という砂糖でできた鶴に
赤いアイシングの目をひたすら手作業で付けていくという
ストイックなアルバイトをしていた私は、
細かい繰り返し作業がそんなに苦ではない。
むしろ、技が磨かれていく自分に嬉しくなったりして
編み物も、規則正しいパターンのものに関しては
慣れるにつれて、どんどん楽しくなる。

今月は、幸運にもロンドンで
編み物作家の三國万里子さんとお仕事をする機会があった。
秋に新しく出版される三國さんのご本の、
イギリス取材のコーディネーターをさせていただいたのだ。

本業とは離れて、私はたまに、日本の雑誌や書籍のための
コーディネーターの仕事を引き受けることがある。
毎回ちょっとずつ内容は違うけれど
主に、イギリスで行う取材撮影の手伝い
(取材対象のリサーチ、撮影のアポとりや当日のガイド、
簡単なインタビューの通訳等々)である。

三國さんは、フォトグラファーの長野陽一さんと
編集者の三角紗綾子さんと一緒にロンドンに到着された。
そして、撮影が順調に進んでいくなか、
取材先のひとつだったロンドンのある毛糸屋で、私が
ピンクの混色の毛糸(上の写真)を買っているのを見て、
三國さんは親切にも
「その毛糸で昼休憩のとき一緒に編み物をやりましょうよ」
と、提案してくださった。


カフェでの昼食のあと。表目と裏目の説明をする三國先生。
 

マンツーマンの編み物レッスンは緊張したが、
三國先生はとても丁寧に、分かりやすく「ゴム編み」による
マフラーの編み方を伝授してくださった。
その手さばきの、鮮やかだったこと。

そして先生は、「次にまた会うときに、
キャストオフ(編み終わり方)の説明をしますね」
とさらりと言い残し、日本へ帰っていかれた。

あれっ。 それってつまり… このマフラーは
そのときまで完成できない、ということでは。

私が次回日本に帰省するのは今年の夏ごろの予定だ。
帰国したあかつきには、三國先生のところへ
汗をかきかき、編み物を教わりに行くことになりそうである。

photography : Yoichi Nagano


2014-03-28-FRI
 

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