『はたらきたい。』という本は、 これから社会に出ていこうとする人たち、 あるいは、すでにはたらいている人たちのあいだに たしかな波紋を広げつつあります。 はたらくことってなんだろう? 会社ってなんだろう? できあがった『はたらきたい。』を持って、 糸井重里は、昔からの仕事仲間である、 任天堂の岩田聡社長をたずねました。 ねぇ、岩田さん、はたらくって、なんでしょうね?



第1回 はたらきたい。 2008-04-11
第2回 就職活動に反発するわけじゃない。
2008-04-14
第3回 あなたが大切にしてきたことはなんですか?
2008-04-15
第4回 星空の下の仕事観。 2008-04-16
第5回 「バカもん!」と言える人。 2008-04-17
第6回 自分がやったほうがいいという覚悟。
2008-04-18
第7回 「ありがとう」に出会う。 2008-04-21



岩田 『はたらきたい。』というタイトルは
とってもいいですね。
糸井 あ、本当? うれしいかも(笑)。

岩田 前にウェブで連載されていたときの
「ほぼ日の就職論。」も読んでましたけど、
それをまとめた本のタイトルが
『はたらきたい。』というのは、
なんていうか、ちょっと、すごいなぁ。
糸井 この本をどうとらえるかっていうのを
ずっとぼくも考えていたんだけど、
『はたらきたい。』っていうタイトルをつけたら、
急に楽になったんですよ。
なんていうのかな、世の中の風潮としては、
はたらくことって、「イヤなこと」みたいに
とらえているでしょう?
岩田 ああ、そうですね。
生活のために自分の時間を犠牲にして
やむをえずはたらいて、そこで得た収入で、
人生の楽しみを得る、というような。
糸井 そうそう。
岩田 もちろん、どんな人生もその人の選択だと思いますから、
そういうはたらき方を否定したいわけじゃありません。
どんな人生もその人の選択だと思います。
でも、少なくとも、私にとってはそうじゃない。
仕事はたいへんなこともあるけど、
同時にたのしいことでもある。
糸井 ぼくもそうですね。
岩田 私が糸井さんとお会いしてから
もう15年以上経ちますけど、
糸井さんは昔から本当に
おもしろそうに仕事をされてますよね。
当然、仕事ですから、
たのしいことばかりじゃなくて、
たいへんなこともありますけど‥‥。
糸井 具体的に、いっしょに
苦しい仕事をしたこともありますよね(笑)。
岩田 ええ、ええ(笑)。
苦しいときは苦しいですし、
息止めて潜って我慢する、
みたいなこともありますからね。
糸井 イヤだなぁー、って
カレンダーを見ながら思うこともありますよね。
でも、学生のときの「イヤだなぁー」と違うのは、
終わって、乗り越えてしまうと、
越えた山がすごく低く見えるんですよね。
岩田 ああ、そうですね。
糸井 だから、手帳やカレンダーをパラパラめくると、
「あ、これも、あれも終わっちゃったんだ」
っていうようなことばっかりでね。
岩田 終わると、イヤだったことも、
たいしたことなかったことになってしまう。
じゃあ、それを乗り越えるために
努力しなかったかっていうと、
努力してるんですけどね。
糸井 うん、うん(笑)。
そういう感じ、学生時代には
わからないのかもしれないね。
岩田 やっぱり、経験しないと
実感できないのではないでしょうかね。
糸井 だから、これから社会に出る人は、
イヤなことに出会うのは当たり前だ、
くらいに思ってたほうがいいかもしれないね。
岩田 もっというと、イヤなことって、
ほとんど毎日のようにあります。
仕事ですからね。
糸井 うん。会社に入ると、
イヤなことの種類が変わるんですよね。
自分でジャッジして決めたイヤなことが多くなる。
それは、イヤなことだけど、
おもしろいんですよね。
岩田 ええ。
糸井 『はたらきたい。』なんだ、それは本当に。
岩田 そうですね。
仕事は、考えようによっては
おもしろくないことだらけなんですけど、
おもしろさを見つけることの
おもしろさに目覚めると、
ほとんどなんでもおもしろいんですよ。
この分かれ道はとても大きいですよね。
糸井 つまり、仕事が楽しいという人も、
楽しくないという人も、
「わぁ、つまんない!」
っていうところまでは同じなんですよね。
岩田 ええ。
糸井 で、あまりにも自分が得意なことというのは、
これまたおもしろくないしね。
岩田 はい、はい(笑)。
糸井 だから、その意味では、
「ちょうどよくおもしろい」なんて
そんなにないからね。
岩田 はい。ちょうどよくおもしろい仕事はないです。
糸井 ないです(笑)。
岩田 仕事はやっぱりたいへんだし、
イヤなことはいっぱいありますよ。
きっと、我慢もしなきゃいけません。
ですけど、おそらく、その人にとって
「仕事がおもしろいかどうか」というのは、
「自分が何をたのしめるか」という枠の
広さによってすごく左右されると思うんです。
糸井 そのとおりですね。
岩田 だから、そういうところまで含めて、
『はたらきたい。』というのは、
糸井さんの仕事観がすごく出ている
タイトルだなと思いました。
糸井 ああ、うれしいなぁ。
みんな、『はたらきたい。』って
思ってるんだって最近気づいたんですよ。
仕事があるときとないときで比べると、
何かがあって、忙しくはたらいているときのほうが
やっぱりみんな生き生きしてるんですよ。
「遊ぶ」と「はたらく」ってね、
同義語とは言いませんが表裏だと思うんです。
子どもたちがビー玉や空き缶で
新しい楽しさを見つけることと、
チャンネルとしては同じじゃないかと。
岩田 うん、非常に近いものがありますね。
糸井 つまり、現実的な問題や、
イヤなことはいろいろあっても、
根本的にはみんな「はたらきたい」って思ってる。
何かをしたくてしょうがないぞ、
ってウズウズする感じが
『はたらきたい。』だと思うんですよ。

(続きます)


2008-04-11-FRI





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