── |
ええと、お互いがお互いの
ファンであるということで、
どうやらお互い緊張なさっているようですが(笑)。 |
坂本 |
ものすごい、緊張してます。 |
宮部 |
ホントに大緊張ですよ(笑)。 |
── |
宮部さんは『メトロイド』シリーズの……。 |
宮部 |
もう、大好きで! |
── |
坂本さんも宮部さんの作品を……。 |
坂本 |
はい! もう、読んでます。 |
── |
よろしくお願いします(笑)。 |
宮部 |
よろしくどうぞ(笑)。 |
坂本 |
よろしくお願いします。 |
── |
まず、坂本さんがディレクションされた
『メトロイド フュージョン』ですが、
宮部さんはすでにプレイされてるんですよね。 |
宮部 |
とりあえず2回クリアしました。 |
── |
わあ(笑)。 |
宮部 |
あの、先日、攻略本をたくさん送っていただいて、
助かりました。ありがとうございました(笑)。 |
坂本 |
ああ、いえいえ(笑)。
あの、宮部さんのホームページの日記を
拝見させていただいてたんですけど、
そこに「セクター4から出られない」って
書いてあって。 |
宮部 |
ずっと出られなかったんですよ~。 |
坂本 |
読んで、「ああっ、宮部さんが困ってる」って(笑)。
すぐ送ってくれってうちの担当者に言いつけて。
そしたら「どの本にしましょ?」とか言うから、
「いや、もう全部送ろう」とか言って(笑)。 |
宮部 |
ありがとうございます。
セクター4はね、ホントに苦労しました。
いろんなことやってみたつもりだったんですけど、
何かひとつ、やり逃してるんですね。
そうすると出られない。そこがね、
「あー、やっぱり『メトロイド』だなー」って。
だから、詰まって悩んでるのも醍醐味でした。
|
宮部みゆきさん |
|
坂本 |
そう言っていただけると救われます(笑)。 |
宮部 |
だからね、私、そこで詰まって進めないとき、
スーパーファミコン出してきて、
『スーパーメトロイド』(1994年発売)
をやり直したんですよ(笑)。 |
── |
わあ(笑)。 |
宮部 |
どこかから出られなくなったとき、
前作ではどういうふうにしてたかなぁ、って思って。
で、『スーパーメトロイド』また立ち上げて、
『スーパーメトロイド』の攻略本を見てみたりとか。
何かやってないことがあるはずだって思って。
で、忘れてたようなことはなかったので、
「絶対、出られるはずだ!」と、
自信を持ってやったらクリアーできたんです(笑)。 |
坂本 |
……ありがとうございます(笑)。 |
宮部 |
そのへんの喜びは、
任天堂のゲームに共通する長所だと思うんですけど、
「もうダメだ、もうできない、もう諦めようか、
でも、もう1回だけやってみよう!」
っていうときに必ず抜け出せるんですよね。
そのバランス調整のすごさが、やっぱり、
ちょっとほかの会社のゲームにないと思うんです。
『ゼルダ』とかもそうですよね。
「もうダメだっ! もう諦めて今日は泣いて寝よう」
って思って、投げ出しそうになるんだけど、
「もう1回やったらできるかもしれない!」
って思って最後にやってみたときに、できる。
そのへんはきっと、バランス調整するときに
すごく注意なさるからだと思うんですけど。 |
坂本 |
そうですね、そのへんは苦労してます。
難しすぎてもダメだし、簡単すぎてもダメだし。
あの、最後にもう1回だけ挑戦したら
成功するように調整するっていうのは、
現実問題、無理なんですよ。
でも、難しいゲームだってわかりながらも、
チャレンジしていって、
プレーヤー自身が成長していくような作りは
意識しているんです。
まあ、最初のうちは非力なプレーヤーが、
ジワジワジワジワ努力して練習して、
その苦労が報われていくというかたちで、
ゲームを進めさせてあげたい。
そこはもう『メトロイド』で
絶対しないといけない部分なんです。
ただ、難しさって、人によって
感じかたがばらばらですからね。
|
坂本賀勇さん |
|
宮部 |
そのへんの調整は作っていて難しいでしょうね。
今回の『メトロイド フュージョン』は
モードというか、難易度が選べますよね?
シリーズのファンとしては驚いたんですが。 |
坂本 |
そうですね。
やはり、前作から9年経ってますからね。 |
宮部 |
そんなに前になるんですね(笑)。 |
坂本 |
ええ(笑)。だから、あのころの厳しさを
そのまま持ってくると、
単に頑固おやじが意地を張ってるだけ
みたいなことになってしまう。
やっばり、自分たちに
「いいものを作っている」という自信がある以上、
少しでもたくさんの人に遊んでいただくために、
間口を広げていくべきだと思ったんです。
もともとは、けっこうユーザーを
突き放したゲームだと思うんですよ、
『メトロイド』シリーズって。 |
宮部 |
そうですね。 |
坂本 |
それで、あの、ま、宮部さんみたいに
必死でがんばってくださる方も
いらっしゃるんですけど。 |
宮部 |
泣きながら(笑)。 |
坂本 |
申し訳ないです(笑)!
だから、やっぱり少しでも多くの人に
楽しさを味わってもらうためにっていうことで、
難易度を選べるようにしたんです。
あとは、『メトロイド』では禁じ手としていた、
言葉での導入というか、誘導ですよね。 |
宮部 |
ああ、ありますね。 |
坂本 |
ええ。つぎの目標をわかりやすく示してあげる。
それも今回はあえてやってみようと。
マップの組み方も、小さなセクターに分けて、
いろんな人が……。 |
宮部 |
先に進めるように。 |
坂本 |
はい。そう考えた結果なんですよ。 |
宮部 |
今回の設定では、文字による誘導が
物語の広がりを生んでいる面もありますよね。
だから私にとってはすごくよかったです。
アダム(サムスに指示を出すコンピュータ)
と会話するのが途中から楽しみになりましたから。
サムスの自問自答のようなセリフもあるし、
あれはとても素敵なギミックだなと思いまして。
古武士のような『メトロイド』ファンの方の中には、
「セリフがあるとメトロイドじゃない!」
っていう人も、いらっしゃるかもしれませんけど。 |
坂本 |
はい、そのへんもかなり気を遣いました。
「難易度設定なんて、とんでもない!」
っていう方もいらっしゃるかなと思うんですけど。 |
宮部 |
でも、単にクリアーを目指すというのではなくて、
全部のアイテムを取ろうとか思うと、
やっぱりすごく難しくなってますよね。 |
坂本 |
そうですね、はい。 |
宮部 |
だから、先ほどおっしゃったように、
間口を広くはしてあるんだけど、
やっぱり骨太の部分も残してあるというか、
古武士のようなファンにも楽しめるように。 |
坂本 |
そうそうそう、はい。
ノーマルモードをクリアーすれば
ハードモードもありますし……。 |
宮部 |
ぜったい無理(笑)。
私、ノーマルモードだけでも
爪が剥げるかと思った。 |
坂本 |
すいません(笑)。そういえば、
難易度に関して興味深かったのはですね、
意外にユーザーのみなさんが優しいんです(笑)。
やっぱり、前作から9年経ってるので、
その当時中学生だった人とかは
大人になってるわけですよね。
だから、前作と比べると
『メトロイド フュージョン』は
ずいぶん親切になってるんですけど、
「ヌルい!」って言う人よりも、
「9年前のことをいまやっちゃダメだよね」って
言ってくださる方のほうが多くて。
あ、みんな大人になってるんやと思って(笑)。 |
宮部 |
あああ~。みんな大人なんですね。そっかー(笑)。 |
坂本 |
みなさんすごく優しくて、けっこうみんな、
大切に思ってくれてたんだなと思いました。 |
宮部 |
それはすごい私もファンとしてわかります。
やっぱり『メトロイド』は、
私にとって、大切なシリーズだから。 |
── |
いかがですか、坂本さん。 |
坂本 |
いや、もう……か、感激です。 |