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宮部みゆき、『メトロイド』の開発者に会う。

 
宮部さんが心酔するのが、
『メトロイド』シリーズの物語と世界観。
生み出した坂本さんは、
どのようにそれを生み出していったのでしょうか。
そして坂本さんの緊張は解けたのでしょうか。



── さきほどから宮部さんが絶賛されている
『メトロイド』の世界観ですが、
シリーズを通して坂本さんが設定を?
坂本 そうですね。
とくに『メトロイド フュージョン』は
全部自分で書いたんですよ。
ストーリーとかメッセージを。
宮部 (ペンで紙に書く仕草をして)お書きに? 全部?
坂本 (タイピングする仕草をして)はい(笑)。
宮部 え? え? え?
じゃ、言葉も、もう、ひとつひとつ選んで?
坂本 そうですね、全部。
いや、とはいっても、本職である宮部さんに
読んでいただくようなものではなく……。
宮部 いえいえいえ、とんでもない!
坂本 それで、あの、宮部さんが
『メトロイド』をお好きだっていうのは、
以前、雑誌の記事で読んで知っていたので。
宮部 はい。
坂本 すごいなー、感激やなーと思って喜んでたんですよ。
僕、ホントに宮部さんの作品、
たくさん読ませていただいてますんで。
宮部 ありがとうございます!
坂本 それで、あの、今回の
『メトロイド フュージョン』で
ストーリーとか、サムスのセリフ、
アダムとのやり取りなんかを書いているときに、
「あ、もしかして、宮部さん、
 また遊んでくれはるんかな?」と思って。
宮部 あ、もう、もちろん!
もうずっと待ってました(笑)。
坂本 それで、それはすごくうれしいことやけど、
本職の方に読まれるのはどうだろうというのが、
すごくプレッシャーだったんです(笑)。
宮部 いや、でも、アダムというのは、
非常に素敵な人格ですよね。
あの、なかなか、あの……。
坂本 そう……そう言っていただければ……。
いや、もう……。
── (……なんだかお見合いみたいになってきたな)

宮部 でも、全体を統括するプロデューサーの方が
言葉のひとつひとつまで選ぶこともあるんですね。
坂本 そうですね。というのは、
最初にこういう事件が起きて
最後にこうなるっていうことを、
先に決めておいたほうが、
現場のスタッフにとって
何をしていいのかがわかりやすくなるんですね。
宮部 なるほど、なるほど。
坂本 もちろん、人によって
いろんなやりかたがあると思うんですけど、
僕の場合はまず、そういう世界観とか設定とか……。
宮部 流れを決めて。
坂本 ええ。先に物語を決めると、やりやすいかな、と。
だから、わりと、現場寄りの考えかたなんですよね。
僕の仕事のやりかたは、いわゆる一般的な
プロデューサーっていうんじゃないと思います。
宮部 そうですか。
坂本 やはり、全体を通してこうなんだということが、
なかなか外からのコントロールではできないので。
それで、まあ、夜遅くまで、みんなといっしょに、
「坂本さん、字間違ってますよ」とか言われながら、
ゴチャゴチャやってるんです(笑)。
宮部 単に物語を重んじるというだけではなく、
システムときっちり噛み合ったうえでの物語を
大事になさっているんだなというのを、
ものすごく感じますね。
── しかも別の頭で考えてない感じがしますよね。
こう、両方がいっしょになってるというか。
宮部 そうですよね、ええ。
坂本 いや、そんな意識してるわけではないんですけどね。
たまたま、ファミコン時代からゲーム作りを始めて、
ゲームっていうものの理解と、
お話というものの理解が、
うまいこと同時に進んだんだと思うんですよ。
宮部 ああ、なるほど。
坂本 当時から、お話を作ったりするのが、なぜか好きで。
だから、いくつかね、
テキストアドベンチャーのゲーム
(文字による選択肢を選ぶことによって
 シナリオが進んでいくゲーム)
も作らしてもらったりとかもしてて。
宮部 そうですかー。
坂本 いや、もう、あんなん、宮部さんに読まれたら、
たぶん、顔から、火が出て、出て、燃える。
── 「顔から火が出て燃える」(笑)。
坂本 とんでもないことで。
あ、いや、でも、それは
プレイしてくださった方に失礼ですね。
いまの発言は、カットしてください!
── ようやく力強い言葉が聞けました(笑)。
宮部 (笑)

次回へ続きます!

宮部みゆき
小説家。代表作に『模倣犯』、『理由』、
『火車』、『蒲生邸事件』などなど……。

↑宮部さんのサイトはこちらからどうぞ。

坂本賀勇
任天堂開発第一部課長。
代表作に『メトロイド』シリーズ、
『カードヒーロー』などなど……。
2003-04-22-TUE