── |
宮部さんは、ゲームで遊び始めてすぐに
『メトロイド』と出会ったそうですが。 |
宮部 |
はい。アクションゲームとしては、
『スーパーメトロイド』が
初めてちゃんとクリアしたゲームだったんですよ。 |
坂本 |
ああ、そうですか。すごく光栄です。 |
宮部 |
最初に『マリオコレクション』をやったんですけど、
やっぱり私の腕じゃ反射神経がついていかなくて。
当時小学生だった、うちの姪や、
そのお友だちとかのほうがよっぽど上手いんです。
それで、彼らから、
「おばちゃん、アクションゲームは無理だよ」
なんて言われて、
私も「そうだねー」なんてうなずいてて。
そのあとに『トルネコの大冒険』をプレイして、
あれは、まあ、反射神経はいらなかったので
コツコツコツコツ遊んでたんです。
そんなときに『スーパーメトロイド』のCMを見て
「これやりたい!」って強烈に思ってしまって。 |
坂本 |
いきなり、ですね(笑)。 |
宮部 |
ええ(笑)。私にゲームという娯楽を
勧めてくれた友だちがいるんですけど、
その人も「まだ早い」って言ってて(笑)。
「もうちょっと易しいゲームをいくつかやって
慣れてからやったほうがいい」って。
でも、すごく楽しそうで、かっこよかったから、
どうしてもやりたくて買ってきてしまったんです。 |
坂本 |
いや、僕も、止めたかもしれません(笑) |
宮部 |
(笑)。案の定、ものすごく苦労したんですけど、
コケの一念でとうとうクリアーしてしまって。
クリアーできたときは、
すごくうれしかったんですよ。
とくにスペースジャンプですごい苦労して。
でも、できるようになったときの喜びって、
すごいじゃないですか!?
だからもう、大好きなゲームなんです。 |
坂本 |
ありがとうございます。 |
── |
『スーパーメトロイド』は名作ですけど、
当時としてもかなり難度の高いゲームでしたから、
初心者が簡単に手を出せるようなものでは
なかったですよね。 |
坂本 |
そうですね。
なんかスポーツを始めてみようかなって思って、
いきなりトライアスロンをやるようなもんですよ。 |
宮部 |
そうだったのかー(笑)! |
坂本 |
かなり珍しい(笑)。驚きですね、本当に。
どちらかというと
『メトロイド』のファンというのは、
プレッシャーを喜びに変える人というか、
難度の高さに対して発奮できるタイプっていうか。
とにかくこう、前へ行きたいっていう強い人。
それからやっぱり、自分に厳しい人じゃないかな、
と思うんですけれども(笑)。 |
宮部 |
私、自分に甘いんだけどな(笑)。 |
坂本 |
いやいや(笑)。 |
── |
それほどまでに宮部さんを惹きつける
『メトロイド』の魅力ってなんでしょう? |
宮部 |
ひとつは、世界観がしっかりしていることですね。
これはもうね、有名なことですが、
サムスって女性じゃないですか。
銀河のために戦うバウンティハンター(賞金稼ぎ)
なんだけども、女性だっていうのが、
当時はそうとう新鮮でしたね。
私は30歳を過ぎてからゲームを始めたんですけど、
そういった大人から見ても魅力的な世界でした。
ハリウッドの映画でも、
こんなに世界観ちゃんと考えてない映画だってあるよ、
っていうぐらいしっかり考えられてて。
それでいて過剰な説明があるわけではない。
そのへんのストイックな感じも魅力ですね。 |
── |
……いかがですか、坂本さん? |
坂本 |
いや、もう……ありがとうございます。 |
宮部 |
あとはやっぱり発見とか探していく楽しみですよね。
抜け道を探すときもそうですし、
「あ、ここが通れる」とか、
「ここでタンクが取れるのか」っていう
楽しみがあっていいんですよね。
たとえばお家で、キューブにアドバンスをつないで
画面で見てても楽しいと思うんですよ。
お子さんがやってるのを、
お母さんが見ててもお父さんが見てても、
「ちょっとこっち行ってみない?」とかね、
「こっちじゃないの?」とかね。
複数で対戦するようなゲームじゃないんですけど、
みんなでいっしょに楽しめる、
そういう魅力のあるゲームだと思うんです。
実際、私も、よく姉といっしょに
わいわい言いながら楽しみましたから。
こんなにストイックで、
設定もばりばりにSFなんだけど、
なぜかそれぞれのプレイヤーの心に残る。
そのへんが、私が『メトロイド』を
すごく大好きな理由なんです。 |
── |
……どうですか、坂本さん? |
坂本 |
いや、もう、ホント……感激です。 |
── |
……もうちょっとなんとか言ってください。 |
坂本 |
……ありがとうございます。 |
── |
いや、僕じゃなくて宮部さんに言ってください。 |
坂本 |
ああ(笑)。
|
── |
ええと、じゃあ、宮部さんとしては、
『メトロイド フュージョン』が出たときは
かなり盛り上がった状態で? |
宮部 |
それはもう!
発売日には、私、自分のホームページに
「祝 サムス・アラン再臨!」って4倍角で
でかでかと書いたくらいで(笑)。
もう、うれしくてうれしくて、
寝床まで持ち込んじゃったりして。
ゲームボーイアドバンスSPって、
ほら、フロントライトだから、
明かりを大きくしなくても布団の中でできるので。
もうちょっと進んでから寝よう、
もうちょっと進んでから寝よう、
って思いながら布団の中でやってるうちに、
「あー2時だ」とかっていう(笑)。
翌朝起きたら目が真っ赤だったので、
これからは布団の中でやるのは
やめようって思ってたんですけど。
でも、ある日、風邪をひいてしまって。
たいしたことなかったんですけど、
「……風邪引いた(笑)」とかって思って。
大喜びでパジャマに着替えて、
また布団の中に持っていったっていうね。
それぐらい楽しく、やってしまいました。 |
── |
……制作者としてはどうですか? |
坂本 |
もう……感激です。どうしたらいいんでしょう? |
── |
どうしたらいいでしょうと言われましても(笑)。 |
宮部 |
なんか、私ばっかり、すいません(笑)。
思いのたけをしゃべってしまって。 |
坂本 |
いえいえいえいえ。 |
── |
あの、宮部さんが挙げられた、
発見の喜びとか、世界観の裏打ちとかいう
『メトロイド』の魅力について、
坂本さんの中ではどの程度意識されてるんですか? |
坂本 |
やはり発見っていうところは、すごく大事で。
単純に行き止まりがあるとしても、
その場所だけで悩ますんじゃなくて、
じつは違う場所から大きく回らせるとか……。 |
宮部 |
そうそう、(指で示しながら)
こーんなふうに回らせたりとかね! |
坂本 |
はい(笑)。
そういうところっていうのは、
すごくやっぱりこだわって作っている部分で。
世界観については、その、正直、
初代のディスク版のときは
大まかな設定だけができていて、
僕はそこに途中から関わったんですけど、
「もう、来月出さなならんし」ということで
慌ててまとめたという部分もあるんですけど(笑)。
まあ、シリーズを重ねるごとに、
そのへんをきちんと継承しながら
整理して、かたちづけていってるという感じですね。 |
宮部 |
今回の『メトロイド フュージョン』もそうですけど、
『メトロイド』シリーズって、
こっちが悪でこっちが正義っていう
単純な構造じゃないですよね。
たとえば、マザーブレイン
(1作目の最後に登場するコンピュータ)だって、
何かものすごく、意志や感情があって。
わざと悪いことをしてるというよりは、
ある種、非常に強力な、
支配する権力の象徴みたいなものとしてあって、
いわゆる悪役という感じじゃない。
だから、怖いんだけども、プレーヤーとして、
ちょっと感情移入ができるっていうか。
こういう存在は、もしかしたら世界のどこかに
あるんじゃないかとか。人間の中にも、
こういうものはあるんじゃないか、とか。
そういうふうに思いながらプレイできるところが、
私が『メトロイド』を好きな理由でもあるんですね。
また、名前がホント秀逸だなと思うのが、
マザーブレインって「母であって支配者」でしょ。
それを、9年前のゲームでやってるっていうのは、
すごい先見の明だなと……。 |
坂本 |
…………。 |
── |
……坂本さん、黙ってないで。 |
宮部 |
また、『スーパーメトロイド』をプレイしてて
私は思ったんですけど、
これは支配しようとする女と、
開放しようとする女の戦いなんじゃないか、と。
それがもうね、「かっちょいーー!」って思って。
私べつにフェミニストじゃないんですけど。
で、今回は、サムスがエックスに
寄生されてしまったことで命が危なくなって、
それをベビーが救ってくれた、
ってとこから始まるじゃないですか。
そこだけでもうファンとしては、
「うう~っ!」ていう感じなんですよね。
で、ラストの場面なんかも……。 |
坂本 |
……………。 |
── |
坂本さん、しっかりして! |