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ほがらかなミシュラン。その7
まっとうな料理評論ってね。

ノリスケ 「ミシュラン」を信用したり
しなかったりするのは自由なんだけど、
「あそこ入ってるけど全然だめだよね」
というところから、
「そもそも『ミシュラン』全体だめだよね」
みたいな意見は僕はどうかと思ってるんだ。
ジョージ ああ、そうだね。
つねさん 何でも否定する人っているのよ。
ジョージ あの、どうかな、全うな料理評論?
いや、これ、これからすごい敵作るようなこと、
言うかもしれないんだけど、
料理だけじゃなく全的に評論の世界って、
変じゃないのよ。そのくせして
評論家が多いんだよね。
映画の世界とかって、
猫も杓子も映画評論をするでしょう?
本当に自分の好き嫌いでしか
映画を語れないのに。
音楽評論もそうで、本当に、どういうのかな、
主観と客観を上手に分けることが出来ない人の
ヒステリックな評論っていうのが、多いの。
つねさん 多いね。
ジョージ で、その、ヒステリーの度合いが強くって、
表現方法がエキセントリックであればあるほど、
注目を集めたりとかするでしょう。
これね、料理の世界も一緒だと思うんですよ。
ノリスケ フランスとかってすごそうよね、
料理評論っていう一つの分野が。
「ゴー・ミヨー」(という、ミシュランと並ぶ
辛口評論で知られるグルメガイド)で
星を落とされて、自殺した料理長もいる。
ジョージ そう。料理評論家も、自分の何気ない一言が
そのお店の生き死にを握ってるっていうことを
十分知った上で、
言葉を暴力にしない範疇で
一生懸命評論をしようとするのね。
あれ見た?
『レミーのおいしいレストラン』。
ノリスケ 見たー。
ジョージ あそこで本当に重要な役割をしてるのが
料理評論家よね。
で、それが素晴らしいの。
つねさん すっごい辛らつな評論家なの。
ジョージ なんだけど、愛情があるのね。
つねさん だから、愛情上乗せで本当はやってるんだけど、
普通の人から見たら分かんないみたいな。
ジョージ で、その彼の評論の仕方というのが、
料理を作る人間の
そのメッセージをひたすら
探り当てようとするのよね。
ノリスケ その料理が、なにを語るのか。
ジョージ で、多分それが、
世界的にいうところの評論という世界であって、
それを一番、身近に感じることが出来るのは、
この「ミシュラン」だわ。
ノリスケ おお。おお。
ジョージ ちゃんと読んで御覧なさいよ。
やっぱり、暖かいもの。
ノリスケ 暖かいですよね。
ジョージ それでこれは、例えば、その、どうかな、
レストランを表現するときって
こういうふうに表現すればいいのかなあ、
っていうふうに、分かってくると、
いいんじゃないかなと思うな。
つねさん ふんふんふん、なるほどね。
ジョージ そういう使い方は出来ると思う。
読み物としてものすごく面白い。
ノリスケ 自分が、ブログなり、人に伝えるときに、
こういうことなんだなって、
ちょっと思うといいかもしれないね。
ジョージ うん。そうそうそう。
ノリスケ でも人は、「ここがだめだ、残念だ」
って書くほうが楽なんだよね。
ジョージ うん、そう。
もちろんほんとうに
「残念」のお店ってあるんだよ。
でも全部が残念なわけじゃないの。
だから今度来るとき
これが直ってるといいねって、
ちゃんとその場で言えれば、
本当に常連さんだからね。
ノリスケ ちゃんとエールをおくりつつね。
michelin
ノリスケ レストランって、ふしぎなのは、
お料理もいい、サービスもいい、
でもなんだか雰囲気がおかしいってこと、
あるじゃない?
ライブやお芝居にもそういうことあるけど、
自分もふくめて、
なぜだか、お客さんのノリが悪いってこと。
ジョージ ある。だけど、それって
お店の責任じゃないでしょう。
ノリスケ だよねえ。
つねさん うるさい客とかねえ。
ノリスケ で、逆になることだってあるしね。
自分たちにしても、
いわれもなく嫌われることだって、あるわけで。
ジョージ あるあるあるある。そう。そのとおり。
ノリスケ 「せっかくの記念日なのに、
 隣の席、大食いの男二人が来て、
 御機嫌みたいだけど、
 ムード台無しね!」みたいなことを、
もしかしたらね、やらかしてるかも。
私たち。
「居酒屋みたいな感じじゃない?」
とか言われたりしない?
つねさん ふーんだ。
「男二人でもラブラブなんだよ!」
って言い返したい!(笑)。
ノリスケ それを言ってもさぁ(笑)。
ジョージ (笑)。
ノリスケ はい。ま、何を言ったところで、
自分たちがそうなってしまう、
一因になる可能性も、
大いにあるってことだもんね。
ジョージ うん。そのとおり。
あるのよ、実際。
ああ、今日は僕ら迷惑なんだろうな(笑)、
っていうのが。
‥‥あるよぉ。
ノリスケ 知り合いが、ミシュランに載ってる店で
大食い記録を持ってるそうなの。
行くといつも、ワインあけて、
5時間ぐらいいて、
ベロベロになって大騒ぎして、
とうとうお店の人たちがほかのテーブルで
お会計の整理とかし始めるんだって(笑)。
ジョージ それはね、もう覚悟してるから大丈夫。
朝礼で「今日はあの大食いのお客さまからの
予約が入っています」(笑)。
つねさん 「あまりかまいすぎないようにしましょう」。
ノリスケ 「てきとうにあしらいましょう」(笑)。
ジョージ ‥‥そういえば、
『恨ミシュラン』って昔あったよねえ。
つねさん あった、西原理恵子さん。
ジョージ 僕、『恨ミシュラン』って、好きよ。
あれ面白かったよ。
あのね、何を恨んでるって、
こんなところに来てしまった自分を恨んでるのよ。
自分の境遇が悲しいわけね。
「この店、ひどいから、
 皆さん行くのやめましょう」
っていうのではないんだよ。
ノリスケ なるほど。
でも、あれをちっちゃくマネするのは、
どうかと思うなー。
ジョージ ネットの世界で『恨ミシュラン』を変に真似すると、
「行くのやめようぜ」って
いうことになっちゃうんだな。
つねさん そうだね。
ジョージ これがね、失礼なこと。
だってね、あんたは嫌いかもしれないけど、
世の中にはこの店がないと
困る人がいるのよっていうことだからね。
つねさん 店の人だってそうだしね。
ジョージ そう。成立してるんだから。
つねさん それはそうだ。
ジョージ 例えば、「ミシュラン」の中にも、
料亭さんでね、丁度防衛庁の額賀さん問題で
接待がどうたらこうたらっていうのが入ってるよ。
つねさん どこ?
ジョージ 「濱田家」。
つねさん あれ、三つ星じゃなかったっけ。
ジョージ うん。三つ星だよ。
まずさ、そういう人たちの
使い勝手のよさを究極まで、
突き詰めてるんだもん。
ノリスケ 密談が出来るんですからね。
素晴らしいことですよねえ。
michelin

2008-02-29-FRI


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