さて、イタリアの子どもたちが
おおはしゃぎするのは、いつでしょうか?
それは冬と春にやってきます。
冬にやってくるのはNatale(クリスマス)ですね。
これは今やイタリアに限らず、
商業化のおかげで全世界的なお祭りになりました。
そして春にやってくる「喜び」は、
Pasqua(復活祭)。
両方ともキリスト教の祭典です。
クリスマスには
プレゼントが付き物です。
そして復活祭には、
伝統的に卵が飾られたり贈られたりしますが、
卵形のチョコレートが一番人気です。
子どもたちはチョコに目がありません。
まず彼らは甘い物が大好きですし、
手や口や服を汚したって平気です。
ダイエットや糖尿病の問題もありませんから、
彼らは天下無敵にチョコレートを堪能します。
しかも復活祭のチョコレートの卵は、
食べておいしいだけではありません。
伝統的には、その中の空洞に、
もっと喜びを炸裂させる小さなサプライズが
仕込んであるのです。
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卵は「命の再生」のシンボル |
ここでちょっと
卵というものに触れておきましょう。
卵は数千年も前から命の象徴でした。
古代エジプトのピラミッドの時代には、
卵はファラオに贈られるものだったのです。
なぜなら、卵は宇宙の4要素である
水、空気、大地、火の真髄とみなされ、
とても価値あるものとされていたからです。
時を下り、中世時代には、
貴重な金属や宝玉で飾られた特別な卵が、
王侯貴族たちに贈られました。
この古典的な伝統は、姿を変えて引き継がれてきました。
そう、イエス・キリストの復活を祝う、
キリスト教で最も重要な祭典によって。
卵は、この命の再生というドラマを、
もっともシンプルに表してくれることから、
復活祭のシンボルになったのです。
近代、私たちに近い時代になって、
「復活祭には卵型のチョコレート」
という習慣が生まれ、
子どもたちにしっかりと定着しました。
なぜなら子どもたちは、
まさに子どもであるがゆえに、
大人になってからは受け取れない
すべての「甘さ」への権利を持っていますから。
ここには、古典的な「復活祭の卵」の準備の
工業化ということも関係しています。
大量生産は物を広める力を持っていますからね。
でも幸いなことに、
画一的ではないチョコの卵を作るシステムも、
職人の忍耐力と巧みの技によって、
まだまだ残っていますよ。
たとえば服を買う時も、デパートで買うのと
オーダーメイドでは大きく異なります。
同様に、菓子職人が作るチョコの卵と
大量生産品とでは、
風味も純粋さも、まるで別物です。
ミラノの、ぼくの家の近くに、
この手のパティスリーのひとつ、
「Namura」という店があります。
ここでは、ココア・パウダー、牛乳、
ココア・バター,そして砂糖で、
昔ながらのレシピの
本物のチョコレートが作られます。
この店も、
復活祭の日曜日の手前は、
チョコの卵作りにおおわらわな日々でした。
チョコレートを大きな鍋で用意し、
中にサプライズをひそませた
大小さまざまな大きさの卵型に作ります。
その他にも、自動車や、
ニワトリなどの動物をかたどり、
果物からとった着色剤で色付けしたものも
用意するのです。
これらもまた、子どもたちにとって
2番目の「お楽しみ」といったところです。
いや、大人だってね、ぼくみたいに
チョコレートを食べても良い人なら、
少なくともこの日だけは、
最高に甘い一日を味わえますよ。