西田 |
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、
このゲームの企画は、じつは、
ゲームボーイカラーのときから動いてたんです。
当時、スタッフのひとりが、企画のネタとして、
「音源チップ」というものを発見して、
これをもとに、なにか、
「音に関する遊び」ができないかな、
と考えていたんです。
具体的には、音源チップをソフト側、
つまりカートリッジのなかに入れて、
それでゲームにならないか、と。
それが企画のはじまりでした。
そのときは、いまのかたちとはぜんぜん違って、
どちらかといえばダンスゲームだった(笑)。
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北村 |
ちょうどそのとき、アーケードで
ダンスゲームがすごく流行ってた時期で。
ちょっとここは流行りモノを
いっちょういこうか! って感じで、
つくりはじめたんですけど、
やっぱりもともとダンスに
興味があったわけではなかったので、
うまくいくはずもなくすぐ挫折して‥‥。
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西田 |
社長の岩田(聡)に言わせると、
「いちばんやっちゃいけないパターンだ」
ということで(笑)。
それで、浮かんできたテーマが
「合奏する」ということだったんです。
私自身は、音楽経験はないんですけど、
任天堂には吹奏楽部という
ものがありまして、それを見ていると、
演奏している人がすごく楽しそうなんですよ。
じゃあ、合奏をかたちにしてみよう、
というので、とりあえず、
ベースとドラムとギター、キーボード。
その4つの楽器でセッションできるものを
つくってみたんです。
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北村 |
そこではじめて、
社内でプレゼンをしてみたんですけど、
ちょっと、インチキをして(笑)。
というのは、立って演奏するだけだと、
たのしそうに見えないかなと思って、
みんなで、派手なかぶりモノをして、
カツラとかも紙でつくって、
衣装をそろえて、セッションしたんです。
そしたら、それが妙にウケて(笑)。
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西田 |
いまでこそ笑い話ですけど、
ゲームのたのしさとは違うところで
アピールしたわけです。
ところがそれがウケたものですから、
それ以降、いろんなプレゼンで、
おかしな格好をして演奏して(笑)。
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北村 |
つぎのプレゼンでは、
紙でギターをつくったりして。
ムリヤリ踊りながらやってみたり。
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西田 |
そういうふうにしていったら、
「おもしろそうだ」という評価が
内部でも定着しまして(笑)。
ま、あっという間に企画だけは、
通ってしまったんです。
ほかにも、うちの部署からは、
いくつか企画を出してたんですが、
けっきょくこれが最後まで残った。
で、正式にチームが組まれまして、
つくっていったんですが、そのころには、
ゲームボーイアドバンスの開発が
進んでいましたので、
ゲームボーイアドバンス用ソフトとして
開発することになったんです。
これも、いまだから言えることですけど、
当初はゲームボーイアドバンスの
発売と同時に売り出すソフトとして
つくっていたんです(笑)。
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北村 |
で、そのころ、最後のプレゼンというか、
最大のプレゼンというか、
当時社長だった山内(現:相談役)のまえで、
全員で合奏してみせるという機会があって‥‥。
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西田 |
全員、もう、ガッチガチに緊張してて(笑)!
ぼくだけは演奏はしなかったんで
平気だったんですが、みんな、
えらい表情で演奏してた(笑)。
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北村 |
でも、よかったんですよね、結果は(笑)。
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西田 |
とにかく、ことごとくプレゼンが
成功するソフトだったんですよ(笑)。
それで、山内(前)社長から、
「東京ゲームショウに出しなさい」
と言われたものですから、
慌てて、1ヵ月くらいかけて準備して。
まあ、大きなブースをつくってもらって
評判にもなったんですが‥‥。
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北村 |
そこから、企画が止まっちゃうんです。
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