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おおらかなことば
~宮本茂さんにきく。 2004年初夏~
──
『ピクミン2』に関して、先ほどさらっと、
「一回できあがったけど、演出し直した」
とおっしゃいましたけど、具体的には
どのへんをどう変える作業だったのでしょう?
宮本
難しいなー。なんなんでしょうね‥‥。
なんかこう、リアリティーを持って
受け取れられへんかったっていうか。
遊んでみてね、こう、なにか、
作り物くさいとこがあったり‥‥。
こう、ユーザーが尊重されてないというかね。
たとえばゲームのなかに過剰な説明があると、
ユーザーは自分がバカにされているような
印象を受けると思うんですよ。
ところがこれはむつかしい問題で、
説明を少なくすると、わかりづらくなりますよね。
あの、前作を遊んだ人だけを
『ピクミン2』の対象にするわけではないので。
新規ユーザーにとっては
覚えることも多いわけですし。
ところが、前作の情報を知っている人と、
同じ量だけの情報を新規の人に渡そうとすると、
すごく、くどい説明になってしまう。
──
はい、よくわかります。
宮本
そのあたりがね、ゲーム全体の作風として、
印象がよくなかったんですよ。
──
「印象がよくなかった」(笑)。
宮本
うん(笑)。なんなのかな‥‥。
やっぱりオトナの人も遊ぶわけだし。
あの、ゲームって、ぼくはやっぱり、
「自分でものを考えること」が
たのしいんだと思ってるんですね。
だから、ぜんぶを説明されて、
「こうですからこうしなさい」と
言われるのには抵抗があるんです。
だから、そのあたりのテキストは
ぜんぶ、総入れ替えしたり。
──
わあ。総入れ替え(笑)。
宮本
具体的なところでいうと、
オリマーとルーイをこき使っている
社長のキャラクターを立ててみたり。
オリマーとルーイの
出会いのシーンをつくってみたりね。
で、そういうふうに提案してみると、
やっぱり、現場の人間も
同じことを考えてはいるんですよ。
ところが、納期もあるし、
なかなか、そのあたりを
細かく仕上げるところまで行ってなかった。
じゃあ、もう一回、時間をかけて
ちゃんと仕上げよう、と。
──
それでやっぱりゲームは
大きく変わるんですよね、きっと。
宮本
ま、みんなね、やり残したことが
いろいろあるっていうふうに言ってたんですよ。
だからタイミングの問題でもあるんですよね。
もしも「絶対に出す」っていう
営業的な問題があったら
違うかたちになったかもしれないし。
そういう意味では運もあるかもしれない。
「やり直せるんだから、やろうよ」
っていうことですね。
──
じゃあ、わりとスタッフの方もすんなりと?
宮本
まあ、スタッフは「やり直し」って聞くと
すごいショックなんですけど。
──
そりゃそうですよね(笑)。
宮本
というか、もう、あの、
大騒ぎになってたんですけど(笑)。
──
あはははははは。
宮本
でも、1コずつきちんと説明していくと、
彼らも冷静になって、まあ、
わりとみんな持ち直したみたいで。
けっきょく最後は、「やってよかった」っていう
ことになりましたから。
──
なるほど。まあ、でも、『ピクミン2』でも、
いわゆる「ちゃぶ台返し」は1回あったと。
宮本
うーん(笑)、ひっくり返したというか、
昼ご飯としてつくってたやつを、
「これは、晩ご飯にしないか?」
という感じやね(笑)。
──
あはははははは。
宮本
ちょっと、まあ、こう、
盛りつけを変えたくらいですよ(笑)。
──
マジメな話、そういう伝統というか意識というか、
「ちゃぶ台DNA」みたいなものは、
チームのなかに生きていくんじゃないでしょうか。
いっぺん自分がひっくり返されると、こう、
あらゆるところに厳しくなるというか。
宮本
あー、そうですね。まあ、うちの場合は、
その、ひっくり返ったことで、
あんまり悪い目に遭った人がないので。
──
あああ、なるほど!
宮本
ひっくり返しても、
だいたい吉のほうに出てますから。
やり直すっていっても、ヘタをすると、
かき回すだけかき回して、
さらに悪くなりますからね。
そこがね、ひじょうに難しいところで。
──
紙一重なんでしょうね。
宮本
あと、ぼくのひっくり返し方というのは
2種類あって、
現場に乗り込んで行って、
もうディレクターといっしょになって
最後までやってしまうというひっくり返し方と、
片づけるのはあくまでも
ディレクターに任すという
ひっくり返すのとありますからね。
そのへんの加減は
すごく大事にはするんですけども。
ま、今回は現場がちゃんとやってくれるという
確信があったので、わりと、好きに言って、
「また5時間ほどしたら食べに来るわ」
っていう感じのひっくり返し方でした(笑)。
──
貴重なお話、ありがとうございます(笑)。
(次回が最終回です!)
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2004-07-19-MON
第1回 さわってもらおう
第2回 開発者がたのしそうだ
第3回 一回リセットしてみたいな
第4回 いろんな枠がなくなっていく
第5回 最先端であるかどうかにこだわらず
第6回 『ゼルダ』と『ピクミン2』
第7回 名物!宮本茂のちゃぶ台返し!
第8回 これからのこと