宮本 |
ぼく、このゲームをどんなふうに
遊んで欲しいですかと言われたときに、
よく言っていたのが、
花札を一生懸命やってると、
お風呂に入っていても、
短冊が湯船に浮かんでるような
気になりますよね、っていうこと(笑)。
熱中したりすると、ね? |
糸井 |
(笑)。 |
宮本 |
そういうふうにして、
ピクミンが見えなあかん、と思ったんですよ。
お風呂に入ったらピクミンが浮かんでるし、
庭歩いてたら足下にピクミンがいる。
わかりやすく言えば
「このゲームをやったあと、
歩いていたら足下にピクミンがいて、
踏みそうになる」
ふうになるものをつくろう、と。
……スタッフには、そういう
精神論が多かったかな(笑)。 |
糸井 |
いや、でも、それ、わかる。 |
宮本 |
そうなってほしいし、
30日遊んだところで終わりじゃなくて、
もう一度遊ぼうと思うように
つくったつもりやし、
何回も遊んでいるうちに
味が出てくるようにしたつもりなんです。
それがユーザーにも、
もっと伝わると思っていたんですが、
意外と……
「えっ、30日で、終わっちゃうんですか?」って。 |
糸井 |
ああああ。 |
宮本 |
「え? もうおしまい?」とか
「コースが少ないですね……」
とか言う人がけっこういて、
……どれくらいいるかはわからないんですが、
そのことがけっこう意外でしたね。
ゲームの発売を待っているときはそう思っても、
実際に遊んでもらうとそうじゃない、
ということを期待していたんですけれど、
わりとそうじゃないお客さんも
けっこういたみたいですね。 |
糸井 |
隠しナントカ、みたいのは、少ないんですか?
|
宮本 |
少ないけど、さっき言ったように、
普通に遊んでいるだけでも
いっぱい見落としているものがあるはずです。
単純に、自分の戦略ゆえに、
見落とすものがけっこうあるので。
そういう意味では、隠してあるもの、
いくつかありますよ。
蜜が出るところがあったり、
温泉が出るところがあったり。
攻略ルートにも、
「よく考えればわかる」というルートが
イッパイあるんですけれど、
でも、……やっぱり、あまり隠してないな。 |
糸井 |
いちばん大きな課題は?
|
宮本 |
ピクミンを一匹も殺さずにクリアできるか?
というものです。 |
糸井 |
それって、やれている人がいるんですか? |
宮本 |
いますよ! でも、僕はできないんで(笑)
マリオクラブに頼んだんですけれど、
できるというのが証明されてます。
最近は、「そんなに上手じゃないけれど、
できましたよ」っていう人も出てきました。 |
糸井 |
はああ~!
一匹も殺さずにクリア!? すごい!
|
宮本 |
でもまあ、バーチャルですから、
少しくらい死んでもいいですよ、
それが遊びなんだから、って。
けど、殺したくないな、という気持ちが
湧いてくるようにつくれたのは、嬉しいな。 |
糸井 |
自分がゲームをさわらなくなって、
……どれくらいだろう?
ほんとにさわらなくなって、
ピクミンで、久しぶりにさわったんですけれど、
「おんなじだ!」って思ったんです。
見たいものが、宮本さんと僕、
ずっと同じだったんだって。
ピクミンのコンセプトと、
自分が、重なる部分がいっぱいあって、
たとえば、MOTHERのときに
「フライングマン」というやつがいて。 |
宮本 |
ええ、ええ。そうですね! |
糸井 |
あなたの意思で便利に使えるけれども、
殺すのもあなたですよ、という。
死んでしまったら墓を立てましたけれどね。
「フライングマンは不平を言わずに、
勇敢に眠った」って、書いてある。
仕掛けをせずに、プリミティブな使い方で、
フライングマンを、完全に
「あなたのために生きる人」
にしたというところで、みんな、泣いたんですよ。 |
宮本 |
そうか……僕、パクってますね! それ!
|
糸井 |
いや、パクってないですよ!
あの気持ちっていうのは、
おんなじ、だと思うんですよ。
あれを、そのあと、誰も、
触ってくれなかったんです。
あんなに面白いのに!
そういうところとか、
マリオのなかにはいっぱいあるけれど、
ドロップに数字が書いてあるっていうのも、
僕と同じセンスなんですよ。
そうしたほうが、楽しいから。
整合性はいらないからそっちにしよう、
というところとか、
MOTHER2のなかで
「地底世界」っていうので、
見えないくらいちっちゃいやつを動かして
敵をやっつけるとかってね。
|
宮本 |
うん、うん。 |
糸井 |
人が楽しみにしていることって、
世代の問題なのかどうかわからないけれども、
宮本さんと俺と、同じ体質の部分が、
にじみ出ているんだなって。 |
宮本 |
そうですよね。けっこう、
みんな持ってる部分なんですよね。 |
糸井 |
みんな持ってるんです。
なんやかんや言って、
どんな物語もギリシア神話のなかに
みんなあるよ、みたいな。
シェイクスピアはひととおり
カタログをつくっちゃったよ、みたいなことを、
ピクミンを見て思って、嬉しかった。
そうじゃない、ある一ジャンルのところだけを
延ばしていくっていうことを
ゲームの人はついやっちゃうものだから、
そこのところで、ジャマになっていたんだなって。
みんながみんな、ゲームの世界の人が
「こうでしょう?」って思っていたことって、
ちっとも「みんな」じゃなくって、
ある一部分のファッションなんですよね。
|
宮本 |
そうですよね、ほんとうに。 |
糸井 |
単純化して遊びをつくろうとしたときには、
いろんな要素がね、俺でもやったなあ、
って思うことがいっぱいあって。
マリオのときやゼルダのときとぜんぜん違うのは、
今回、僕、ぜんぶ、フィットしたってことなんです。
マリオなんかだと、どうしても、
服装なんかに物語性が入るから、
どっかの資料だろうな、
どっかのところでこう決めたんだろうな、
っていうのがあるんだけれど、
ピクミンってぜんぶ素っ裸じゃないですか。 |
宮本 |
これ、ないですよ、なにも。(笑) |
糸井 |
参考資料が作れないよね。 |
宮本 |
でもね、僕自身は、そうなんですよ、いつも。
|
糸井 |
はあ~~~! そうなんですか!? |
宮本 |
僕自身が描くものというのは、
年賀状描くときに動物の写真を見るくらいで、
あまり、資料を見ないんです。
ちょっと上手に書きたいときに見るくらいで。
オニヨンなんかでも、ラクな絵を描いて……
インディアンのテントのようなのを描いて、
骨組みがあって、この構造がいいからって、
その通りつくってもらったら、
ちょっと何か足りない。
テカテカしていったら、
古代の壺みたいになったんで、
最後のほうに足を曲げてもらって。
そういうふうに、
けっこう雑な作りをしているんですよ。 |
糸井 |
そうか……「パート2」は考えていますか?
|
宮本 |
ええ。 |
糸井 |
いいや、って捨ててしまったところを
ぜんぶかき集めると「2」ができるんですよね。 |
宮本 |
いちおう、「2」を想定しての伏線や
設定はあるんですよ。
舞台が●●だというのも、その一つです。
オリマーは3センチか4センチほどの人なんで、
こいつは人間じゃなくて、ここは●●や、って。 |
糸井 |
それ、……言っちゃ、だめですよね?
|
宮本 |
ん、でも、ま、みんな感じるかなと思って。
だからラムネの瓶とかもありますし。
そういういろいろ布石を打っていて、
2、3をどうつくろうかなと言うものあるけれど、
ストーリーはあとの問題でね、
仕掛けだけはしているんです。
ピクミンを次にどういう形にしていくか、が、
この商品のイノチで、
周辺のグッズをつくるよりも、
ゲームの本体をどう展開していくか。
それを、3年ではなくて、
1年か2年の範囲でやりたい。 |
糸井 |
これも、すっごい短かったんですか、製作期間は。
|
宮本 |
原実験は、長かったんですけれど、
これをつくったのは一年、くらいですね。 |
糸井 |
……すばらしいねえ! |
宮本 |
この次も、一年以内でつくれる自信は
けっこうあります。 |
糸井 |
いま、つくる・つくらないの判断は、
自分でしていいんでしょう?
|
宮本 |
そうですね、もともとそうなんで。
あとは現場とかみあうか、が、
いちばん大きなところ。 |
糸井 |
あ、もともと、そうなんですか!
それはたしかにそうなんだけど、忘れていた! |
宮本 |
よっぽど「やめとけ!」言われない限りはね。
「あかんと思うけど、ま、やったら」と言って貰える。 |
糸井 |
そのことが、ものすごく重要でしたね。
宮本さんにさらに決済をする人が必要だったら、
過労死してたね! |
宮本 |
そうですね。僕自身が、現場に対して
これをキャンセルしかけたこともあるくらいの
階層でやってるんで、もう一個上にいたら、
諦めていたかもしれないですね。 |
糸井 |
(笑)。
|
まだもうちょっと、続きますよ~!