ノリスケ |
ここでね、勘違いしていただいては
困るんですけど、あくまでもこちらの
リクエスト通りではないことに対して、
悲しんでるのよね。
よくね、ゴネれば、
アップグレードするんだよとか。 |
つねさん |
クレーマーじゃないわけよね。 |
ノリスケ |
分不相応な高望みをしたいわけじゃない。
期待どおりであってほしいだけ。
ましてや怒りや不機嫌みたいな
マイナスの武器を
さも正当であるかのように
使うみたいなことは、
ほんとに嫌なんですっ。 |
ジョージ |
うん、そう。 |
ノリスケ |
格安エコノミー航空券を
ビジネスにアップグレードするには
とにかくカウンターでゴネろ、とか。 |
つねさん |
はいはいはい。 |
ノリスケ |
カードの年会費を無料にするには
カスタマーサポートにこう言えとか、
そういうマニュアル的なことが
耳に入ってくるんだけれど‥‥
あれは嫌。 |
ジョージ |
あれはよくないね。
「期待通りであること」が大切であって、
期待以上を狙うと絶対に
期待以上にはならないのね。 |
ノリスケ |
そう。で、ジョージさんも、
期待通りでないことについて
言っているんだけど。 |
ジョージ |
人間、怒っちゃダメ。
悲しまないとダメ。 |
ノリスケ |
怒ってたくせに(笑)。 |
ジョージ |
だってボクは悲しさが
怒りになるんだもん。 |
つねさん |
ああ。 |
ノリスケ |
ああ。 |
ジョージ |
だってボクは、何であれだけ一生懸命、
予約のときに、キングサイズねって
念を押したのに、なぜ? って。
何であなたたちは嘘をつくの?
私ってそんな悪いことをしました?
って悲しみの表現をするつもりが、
「クイーン」だなんて言われたら
もうほんっとに。 |
つねさん |
そりゃ怒るわなあ。 |
ジョージ |
そう。でもあの時のスイート、
すごいよかった。 |
つねさん |
ははは。 |
ノリスケ |
ははは。 |
ジョージ |
そのホテル素敵だったよ。
ロサンジェルスのベルエアだったけど、
用意してくれたスイートが、
パビリオンっていうか離れになってる
一戸建てのスイートで、
うわ、素敵って言ったら、
でしょ? エリザベス・テーラーが
よく泊まってた部屋だからって。
うわ、すごいーとか言ってたら、
そのステイの間ボクずっと
リズだったから。愛称が。 |
つねさん |
リズ。わははは。
たしかに「クイーンですから」って
目配せするスタッフのいるホテル。 |
ノリスケ |
そうね。最後までプリプリと険悪でいたら
ホテルとしても困っちゃうもんねえ。 |
ジョージ |
ホテルにしてみれば
いい部屋は使ってほしいの。 |
ノリスケ |
サービスのコストはそんなに
変わらないだろうしね。 |
ジョージ |
そう。
でも、ほんとに、ああ、
最近ささくれだってないなあ。 |
ノリスケ |
いいことよ。 |
つねさん |
ふふふふ。 |
ジョージ |
今ささくれだったら
大変なことが起こるんだろうな。 |
つねさん |
そうだよ。いろいろね。 |
ジョージ |
上を下へのてんやわんやのお騒ぎってやつ? |
つねさん |
そうねえ。 |
|
ジョージ |
昔はね、手紙をよく書いた。 |
つねさん |
あ、そう。いろんな人に? |
ノリスケ |
お礼の? |
ジョージ |
お礼の手紙も書いた。
だけど、期待通りじゃなかった時にも
よく書いた。それももうほんっと
イライラするわけよ。
こんなはずじゃなかった、
こんな部屋じゃなかったとか。
サービスが思った通りじゃ
なかったとかって思うと、
後々チェックアウトするまで
その気持ちを持っとくと嫌じゃん。 |
ノリスケ |
うん。じゃ、お部屋で書いて? |
ジョージ |
うん。もう、その場で書くの。 |
つねさん |
で、部屋に置いとくんだ。 |
ジョージ |
うん。引き出し開ければ
たいてい便せんか絵はがきあるでしょう?
まあ、小さい怒りだったら
絵はがき分で済むのよ。
小っちゃーい文字になるけど。 |
ノリスケ |
いっぱい書くのね‥‥。 |
ジョージ |
で、絵はがき分で済まない時には
便せんに書くのね。
こうこうこうだと思っていたんだけど、
こうでああでこうなって、
どうとかこうとかで。
で、本来こういうふうに
していただけるものと思っていたんだけども、
非常に悲しかったと。
あなたたちというのはこんな程度の
サービスしかできない人たちではないと思う。
私はこのホテルを好きになりに来たのに、
何故好きにさせてくれないのかということが
悲しくて悔しくて、今日はもしかしたら
眠れないかもしれませんっていうのを
部屋に置いたり、晩飯食いに出る時に
ペローンってロビーに立ってるのに
ピュッと渡して、よろしくね、
みたいな感じで。
で、晩ご飯食べてるとすごいよ。
やってくるの。人が。 |
ノリスケ |
Gのつく人が(笑)。 |
ジョージ |
そう。
「ジョージ様、
申し訳ございませんでした」
「でしょう? ちょっと寂しかったの、
今日は」 |
つねさん |
もうそれ、めちゃくちゃ
ささくれてるんじゃん(笑)。 |
ノリスケ |
それ、どこの国の話? まさか日本? |
ジョージ |
アメリカ。 |
つねさん |
アメリカだよ、絶対。 |
ノリスケ |
そうだよね。 |
ジョージ |
日本だとそこまでしないよ。
アメリカだからそこまでするのよ。
そうするともうお部屋は変わらないけど、
まあ、1回だけ変わったことあるけど、
シャンパンが中に入っていたり、
翌日飛行場まで行く車が、
中で卓球ができそうな車が
やってきたりとか。でもそういう時に限って、
ちょっと賢い旅行で
エコノミークラスだったりすると、
すんごい恥ずかしかったりするのよね。 |
つねさん |
ふーん。 |
ジョージ |
昔、例えばユナイテッドに乗って、
ファーストクラスでチェックインすると
車を降りる場所も違っていれば、
チェックインのカウンターも違い。 |
ノリスケ |
カウンターは違うねえ。 |
ジョージ |
しかもイミグレーションも
違っていたりとかしたのね。 |
ふたり |
そうなんだ! |
ジョージ |
うん。で、今そういうのが残ってるのが
シンガポールのチャンギ空港で、
シンガポールエアラインの
ファーストクラスに乗ると、
ほんとに全然違うんだよ。
でね、昔、アメリカでね、
送迎車がすごかった時、
車は当然、一番手前の、
ファーストクラス用の車寄せに
停まるわけ。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
その先にビジネスクラスがあって、
ずーっと向こうに
エコノミークラスがあるんだよね。
なのにファーストのところで
停められてしまって、先に停めてほしいのに
降りないといけないじゃん。
で、降りてしまうとそこに人が立っていて。 |
つねさん |
あ、中に連れて行かれるんだ。 |
ジョージ |
そう。中に連れて行かれそうになるんで、
それをけん制しながら、
車が動くまでニコニコしながら待って。 |
つねさん |
で、ガラガラガラガラー。 |
ジョージ |
持ってる荷物を引ったくるようにつかんで、
ごめんなさいって言って、
テクテクテクテク向こうまで歩いた。 |
ノリスケ |
あははは。悲しいー(笑)。 |
ジョージ |
すっごい悲しかった。
すーっごい悲しかった‥‥。
|