糸井 |
なんかスポーツチームみたいだね。 |
宮本 |
いやあ、そうですよ。
満塁で肩が暖まってないのに
いきなり出てきたピッチャーみたいな
ことが多いんで…。 |
糸井 |
そうだよね。要するに何かを変える時ってのは、
前が良かったから変えるってことはないからね。
必ず苦境に立った時に
チェンジがあるわけだから…。
それは予定通りなんだよって
言われて臨めばいいんですよね。
お前そういう時のためにいるんじゃないか、
あっはっはってね。
うち(ほぼ日)はビビんなくなったね、
そう言えばね。 |
宮本 |
それは、作り続けてるから。
|
糸井 |
あっそう。そうです。作り続けてる。
毎日っていうのが良かった。 |
宮本 |
僕らは、毎年3本くらい作り続けているけど、
ディレクターは2年か3年に1本なんで、
すっごい入ってしまうんですよ。力が。
ま、そこがプロデューサーの仕事というか。 |
糸井 |
よくさあ、気休めみたいに
命まで取られるわけではないって
言葉があるけどさ。
あれを本当にそう思う時ってあるからね。
今度はもうちょっと楽な話でさ、
作ってる時の喜びは
もう十分わかるんですけど
出ちゃってから、何が嬉しい? |
宮本 |
出てからねえ。 |
糸井 |
あんまり嬉しくないってのもあるよ。 |
宮本 |
出てからはあんまりないんですよね。 |
糸井 |
やっぱり。 |
宮本 |
スタッフの機嫌が治るのが嬉しい。
あれって。やっぱりね、
上手くいったプロジェクトは後がいいですよね。
リカバリーが。
尾を引くやつはつらいですよね。
そういう意味では
売れるっていうのが基本なんですけども。
口を酸っぱくして言うんですけど、
今の人達ってほら、
僕も基本的にはそうなんですけど、
嫌われたくないし、
あんまり好戦的ではないんで、
平和を望むんですけども、
結局、民主主義になって
そういう人達って最後、
失敗した時に逃げるんですよね。
だからやっぱり失敗しないってことに対して
一番責任を持って動いてる人が
絶対いると思うけど、
けっこう苦手な感じ。
今の人達、若くなればなるほど、
苦手なんですよ。
だから凄い人当たりのいいディレクターは
いるんですけど。打った後の責任まで
ちゃんと持ってる人っていうのは、
なかなか見つかりにくくて。 |
糸井 |
僕、ゲーム会社やってて
本当に嫌だと思ったのはそれだもん。
みんなでかばい合うじゃないですか。
あれが嫌で嫌でしょうがなくて。
あいつもいいとこあるんですよ。
って必ず言うよね。
お前、それでお前にかかってる負担だぞって。
オレはなんかもっと辛いぞみたいな。 |
宮本 |
上手くいってないプロジェクトでね、
それやられるとね。
そんなこと言ってるからあかんねん。 |
糸井 |
やっぱり学級委員会みたいですよね。
学級委員会って
政治のひな形を持って来て
選挙やったり何かしてるけど、
目標もなければ義務もないじゃないですか。
だからかばい合って仲良くやってくと
時間が過ぎてけば終われるんですよね。
だけど、僕ら仕事だから
答え出さないといけないわけで。
答え出す時にあいつもよくやってるんですよって
言い合ってたら何も動かないんで。
それをじゃあ、
全部オレが片付けるっていうのは
もうできないサイズになってますからね。
やっぱり暴走族上がりのやつを使うべきだね。
僕も前に人に聞いたんだけど、
なんでけんか強いんですかって言ったら、
僕はいつも断崖絶壁が後ろですから
前に行かないと落ちるんですよって。
それをしゃあって言った時に
この人は本気にそういうことばっかり
やってたんだなって。
暴走族系の子ってそうじゃないですか。
好きでやってるんだけど
命張ったことがあるっていうか。 |
宮本 |
うち弱いんですよ。
僕もぼっちゃんだし、
ほとんどいないんですよ暴走族系ね。 |
糸井 |
なんで宮本さん、ぼっちゃんの割には…。
いっぱい作ったからですかね? |
宮本 |
そうじゃないですかね。
売るのが前提ですからね。 |
糸井 |
宮本さんの中で
失敗って作品はあるの? |
宮本 |
過去にもやっぱり
そういうのはいくつかありますよ。
そういうのにかぎって
「宮本さんあれはもったいない」
って言われるんですよ。
「後2ヶ月直さなきゃ」
みたいなこと言われるとね、
分かってんねんけどね‥‥
分かってんねんけどやっぱり‥‥ |
|
糸井 |
しかし、宮本さんのゲーム評って上手いよねぇ。
「このゲームは、
根本的にはいいんだけども....
味付けに失敗してるから
商品としてはダメだったんです」
とか言うでしょう?
いいところ見つけるのが上手い。
物凄く見てますよね。
僕、今でも覚えてるのは、
「カービィ」ですよ。
「カービィ」が
「ティンクルポポ」っていう
別のゲームだった時に、
「これは面白いんで、
味付けを変えたらいけると思うんですよ」って、
いったん発売中止にさせたんだよね。
そこから無理矢理のように立て直しましたよね。
いつのまにか、「ティンクルポポ」ってゲームが、
「星のカービィ」に変わっちゃって発売された。
あれ画期的だったと思うんだよね。
オレその現場にいたんだよね。 |
宮本 |
内容はほとんど手を入れてないんですよ。 |
糸井 |
一時は任天堂が不作の時に
「スーパードンキーコング」が
つないでくれたじゃないですか。
あれだって宮本さん、
可能性を感じたわけだよね。 |
宮本 |
僕、さりげなくいい仕事してるんですよ。
ポケモンもカービィも。 |
糸井 |
ああいうグランドプロデューサー
みたいな仕事多いよね。実は。
シムシティ、テトリス。
いいとか、悪いとかって、
いい悪いの基準が「一覧表」になって
存在してるわけじゃ
ないじゃないですか。
どうしてそのあたりのことがわかるんですか? |
宮本 |
それ、何やろなー?……それ、
作者……やっぱりこだわりやと
思うんですけどね。
その商品の持ってるこだわりの部分に、
共感するんでしょうね。 |
糸井 |
何が面白いか、すぐわかる、
っていうあたりに、
やっぱり大ヒットはあるよねー。 |
宮本 |
すぐわかる。
しかも、発明をしてやろうと
思てる人が共感するというか。
うまいことやりやがったな、
と思う部分っていうのが、あるんですよ。
その要素だけいただいて自分の作品をつくる
方法もあるかもしれないけど、やっぱり
もう今さら俺がやれへんよな、
って思たときに、
育てたらええのにな、って。
だから、自分がやりました、
という作品では絶対ないですよね。
それをどうやったら売れるかっていう。
糸井さんが昔若いころに、嵐山光三郎さんかな?
か誰かに、食事をご馳走になって
「君、すごいいいよ」
って言われたことがあるんで、
そろそろ自分もそういうことをする年かな、
と思ったって(笑)。
ああいう感じかな?
僕が作るんやないけど、
君、すごいええよ、って。 |
糸井 |
その仕事は大事だよ。
言われたやつは、
ちょっと自信あるやつに決まってるんですよね。
ところが、そのまんま「いいやっ!」て
思っちゃうんですよね。
そんときに、「いいに決まってる」って
もう1回念を押されたらね、
いい方に行くに決まってるんですよ。
いいタイミングでよそのオジサンから
褒められるっていうのは、いいことだよね〜。
「オジサン」っていう会社作ってさ、
褒める会社作ったら? |
宮本 |
それはスゴクイイ!!
こないだ結婚式のスピーチでね(笑)、
いかに僕、嫁さんをおだてることが
下手かっていう話したんですけども(笑)、
現場の連中も来てる前でね、
いや僕も、任天堂ではすっごい
褒めてもらって育ったんですよね、って。
先輩にはすっごい褒めてもらって
育ったけども、後輩褒めてないんですよ。
だから、ちょっとはね、
褒めてやらなあかんなと最近思てます、
っていう話をしたんですけど(笑)。
うん、やっぱり、大事ですよね、
褒めるっていうのは。
あるプロジェクトが難航したときに、
できあがってから、スタッフに聞いたんです。
「僕は何がいちばん役に立った?」って。
できないんじゃないかって思てたときに、
これは完成できるよ、って言うたのが
すっごい助かった、って言うんですよ。
心の支えになったって(笑)。 |
糸井 |
それは大事ですよね。 |
宮本 |
ですよね。 |
糸井 |
んーっ! |
宮本 |
ですよね。
経験ある人に太鼓判を押して欲しいっていうか。
それだけですごい元気になれるっていう。 |
糸井 |
よく言うじゃないですか、
野球チームでさ、
優勝経験のある選手が混じってるの大事だって。 |
宮本 |
僕はね、よく考えて作っている人には
「こんな頑張らなくても
すごいもんができる」って。
これ以上頑張ったら、
とんでもないものになるよ、
って言うんですよ(笑)。
甲子園行くときは、
負けるかもわからんって言ってて。
でも相手は、やっぱり同じ高校生で。 |
糸井 |
ものすごい差があるっていうことが、
たまーにあるけれども。 |
宮本 |
ほとんどがないですよね。 |
糸井 |
ないですよね。うん。 |
宮本 |
それを見てると、
不安の方に心を使わないで、
クリエイティブな方に使おうよと(笑)。 |
糸井 |
不安の方に心を使った分だけ、
クリエイティブの量が減りますよね。
前に行く力がね。
何でも欲しがる人用のサービスをすると、
それしてる時間と、その能力が、
いい方作る力がなくなるんですよね。
だからやっぱりいいとこ伸ばすっていうのが
自分たちなんだ、うん。 |
宮本 |
そうですね。 |
|
糸井 |
じゃ、あと、質問みたいなのがあったら……。 |
ほぼ日 |
話がうんと戻りますが、
青沼さんからなんですけど、
青沼さんがご自身で、
この宿題を解決できないまま
進んでしまったという
反省を込めての質問なんです。
「タクト」を操作するときに、
左右のアナログ・キーを左右に動かす。
それでリズムが変わりますと。
で、これにですね、
上下に入れると音の大きさが
変えられるというのを、
宮本さんが必ず入れて下さいとおっしゃった。
それが、どうしても生かしきれなかったと。 |
宮本 |
それは青沼が反省しなくていいです。
僕が入れるべきネタだったんですよ。
それぐらいなネタは足せると思ったんですよ、
自分で。ところがやっぱり、
あまりにも仕掛けが多かったので、
もう必要ないかと思って、
複雑になるのでやめたんですよ。
本当はね、たとえばライオンが寝ている部屋で
大きな音で演奏すればライオンが起きる、
なんて仕掛けをしたかったんです。
あるいは、向こうの人が、
「シーッ」て言ってるので、
音量しぼるっていう技を使ったら解ける、
っていうのを考えてたんですけども。
遠くの人には音量を上げると届くとか。
けどね、そんなことしなくても、
いっぱいイベントが仕掛けられたので。 |
糸井 |
面白そうじゃん。でも、
それを入れ込んだら
ちょっと複雑にはなってたんだろうな。
ゲームさ、音楽で使う以外の耳の使い方って、
ホント少なかったじゃないですか。
僕、「MOTHER」やるときもさ、
耳から、っていうのを使ってたんだけど、
もっと来るよね。
ラジオ・ドラマが成り立つんだもんね、
世の中ね。 |
宮本 |
ゼルダ、ステレオでやってると、
後ろに敵が来たのがわかりますよ。
ドルビー・プロロジック・ツーですね。 |
糸井 |
5.1チャンネルをつなぐっていうこと?
あれね、カミサンに片づけられちゃうんだよ。 |
一同 |
(爆笑) |
糸井 |
‥‥それじゃ、そろそろ東京に帰ります。
今日はどうもありがとうございました。
また、お話しできるのを楽しみにしています。 |
宮本 |
僕もです!
いやあ、しゃべっちゃったなあ。
どうもありがとうございました。
またね、糸井さん。 |