Sponsored by Nintendo.

宮本茂 × 糸井重里、対談2005

 

糸井 宮本さんも犬を飼ってるんですよね。
宮本 はい。3年ほどまえから。
糸井 ぼくも去年から飼い始めたんで、
ああ、そういや宮本さんもだなあと思ったら、
妙なうれしさがあったんだよね。
宮本 (笑)
糸井 犬にはほんと、
いろんなことを教わるんですけど。
その、なんていうの、管理しきれないものを、
教える側が勉強してくしかないんですよね。
宮本 そう、そうですよね。
糸井 たとえば『ゼルダ』で
宮本さんが発明したことのひとつって、
「経験値を画面のなかの数字じゃなくて
 自分の体内に蓄積する」
っていうことだと思うんですよ。
「自分の脳に経験値をためていく」
っていうのが
『ゼルダ』の画期的なところで、
それをみんなが評価したんだと思うんですけど、
ぼくは、あれがいま、
犬を教えるときに活きている気がするんですよ。
つまり、犬のなかには
経験値なんか増えていかないんですよ。
こっちの経験値が増えていくと、
どんどん犬がいい子になっていくというか。
宮本 そうですね。うん。
ぼくもね、犬になにかを教えるのは
最近うまくなったんですよ。
最初は、娘とか嫁のほうがうまくて。
ぼくはどうしてもこう、
力でいこうとしてたので。
糸井 はー、そうですか。
宮本 わりとしてしまうんですよ、ついつい。
糸井 部下をそうするように(笑)?
宮本 部下も、そうかもしれんけど(笑)。
まあ、それで、しばらくしてようやく、
こう、犬のペースに合わせて
自分が動くというようなことを学んで。
糸井 はいはいはいはいはいはい。
宮本 「犬はこう思ってるのか?」
いうのがわからへんと、
何もわからないですよね。
力でいっても、ダメなんですよね。
糸井 そうですよねー、うん。
宮本 あの、庭なんかもそうでしょ。
やっぱり、草木はね、あの──。
糸井 思うようにならないよね(笑)。
宮本 思うようにならないので。
それで、もう、あの、
何ヶ月前にした失敗が、
いま響いてるとかね。
もう、そういうもんでしょ。
糸井 うんうんうんうん。
宮本 水泳もぼくはなかなかうまくならなくて。
もう、10年くらいやってるんですけど、
力が入ってるうちは、うまくならないんですよ。
そういうので、けっこう、
40過ぎてからいろいろ勉強しましたね(笑)。
その、しばらくゲームばっかりやってたんで、
経験が偏ってたせいもあるし、
40過ぎてから自分のことがいろいろわかってきて
楽しいなと思てます。
糸井 なるほどね。あの、早い話が、
ゲームばっかりをやっていると、
どこを押したらどうなるっていうことを
信じすぎちゃう病気になりますよね。
つくってても、遊んでても。
「Aボタンを押したら跳ねる」ってさ、
誰かが、押したら跳ねる仕掛けを作っただけで。
べつに、マリオってやつがそこにいて
跳ねてるわけじゃないから。
押したら跳ねると信じ込むっていうのは、
ほんとはちょっとおかしいですよね(笑)。
宮本 ちょっとおかしい。うん(笑)。そうです。
糸井 跳ねないときもありますよね、実際は(笑)。
宮本 で、跳ねないときは、
「許せない!」とかなるでしょ。
つくってるほうも遊んでるほうも、
だんだんそうなるので。
糸井 つくるほうも、やっぱりなるんだね。
宮本 うん、なるんですよ、だんだん。
だから、「どうして跳ねないのかな?」って、
考えてみるとおもしろいとかいうふうな
興味にいかないんで。
糸井 うんうんうん。
宮本 やっぱり、ちょっとこう、
リセットの文化から外れた流れで
ものがつくれるといいんですよね。


続きますよー。次回の更新をおたのしみに!
2005-03-02-WED