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宮本茂 × 糸井重里、対談2005

 

任天堂は京都にあって、
宮本茂さんも京都にあるので、
そこから突然、ニンテンドーDSのような
「新しいおもちゃ」が届くと
ぼくらは「いつの間にこんなものを?!」と
驚いてしまうわけですが、宮本さんの話を聞くと
多くのことがすとんと腑に落ちるのです。
宮本茂さんを、糸井重里が訪ねました。
これまでのこと。これからのこと。
そして、ぜんぶの根っこのようなこと。
全9回のゆったりとした対談をお届けします。
担当は「ほぼ日」の永田です。

宮本 『マリオ』とかのシリーズものっていうのは、
誰にでもわかるというか、
ゲームをしない人が
怖がらないようなソフトですから、
やっぱり必要なんです。
その、ことばで聞いたときに、
みんなが興味を持つものっていうのが、
いま、ゲームにはほんとうに少なくて。
タイトルを言う以外に、
人に興味を持たせる方法がないんですよ。
だから、タイトルを知らない人にとっては、
もう、ゲームが興味のないものになってる。
たとえば、ここ数年でいうと、
「バウリンガル」
(*タカラから発売された玩具。
 犬の首に取りつけ、鳴き声を音声分析して
 犬の感情を無線で知らせるもの)

とかにぼくはすごく悔しい思いをしてて。
その、「バウリンガル」という名前だけで
いけてるよなって思うんですよ。
糸井 うん、それだけでもうわかるもんね。
宮本 そう。ああいうふうに、
ふつうの人が興味を持つものっていうのが、
最近のゲームにはないよなって、
ずっと思ってたのでね。
糸井 それは、ぼくらが「ほぼ日」で
企画を立てるときも気をつけるところなんです。
コンテンツをつくるときに
ぼくはいつも言ってるんですけど、
タイトルができちゃったら
もう、オーケーなんですよね。
宮本 小説なんかはとくにそうだと思う。
糸井 「坊さん」っていったら、
もう坊さんじゃないですか。
「欽ちゃん」っていったら
欽ちゃんじゃないですか。
宮本 うんうん、そう、ひとことでね、言えるものが。
糸井 逆に、タイトルに集約できないものを
つくるときは苦しいですよね。
宮本 うん。だから、『nintendogs』も、
内部ではずっと『犬』って呼んでるんです(笑)。
糸井 『犬』ですよね、あれは(笑)。
『犬』は、いつ出るんでしたっけ?
宮本 まあ、春ごろには出したいなと思って
やってるんですけどね。
(*このあと、2005年4月21日発売が決定しました)
糸井 ぼくはずっとたのしみにしてるんですけど、
あの、買わないうちから
ぼくがずっと想像してるのは、
「どう飽きるんだろう?」
っていうことなんですよ。
宮本 ああ、そう。そうですね。それ、ぼくは、
「どう飽きささないか」を考えてしまう。
糸井 同じことだよね。
宮本 うん、そこで思うのは、
「とことん飽きないところまでつくる」と
失敗するかな? とか思ってて。
糸井 ああ、そっか。
宮本 だから、「ま、犬だからね」
って言えるような(笑)、
そういう感じになればいいと思うんですけどね。
糸井 ぼくはね、さっき宮本さんが言った、
「机の上に置きっぱなしにする」という
「卓上」っていうことばに
ヒントがあるような気がするんですよ。
つまり、カレンダーが机の上にあってもさ、
飽きたの飽きないの言わないじゃないですか。
宮本 そうそうそう(笑)。そういうことですよね。
だから、ぼくもスタッフに、
「飽きてもいいけど、遊んだ人が
 『人にあげたくない』と思えばいいから」
って言ってるんです。
糸井 そうそうそうそうそう。
宮本 「家に置いときたい」って思えばいい。
こういう言いかたはなんですけど、
中古屋さんに売りにいきたくなくなるようなね、
そういうものになっていればいいと思うんです。
遊び手の気持ちとしてね。
糸井 だから、いままではさ、その、
なんかおもしろいものをつくったとしても、
作品とそれを買った人が対決してないと遊べない
っていう感じじゃないですか。
「どうなんだ?!」みたいな。
そういうやり取りはさ、
勘弁してくれよってところもありますよね。
その意味で、「卓上」っていうことばを、
宮本さんから聞いちゃったら、
そうとうなんでもありになるよね。
宮本 うん。だから、こう、ゲーム機に
触らずに遊べるぐらいがええよな、
とか言うてるんですけどね。
「Touch! DS」とか
キャンペーンやってるのに、
こんなこと言うのもなんですけど(笑)。
糸井 あの、うちに、「今日も金魚は」っていう
ただただ金魚が映っているだけっていう
コンテンツがあって、
けっこう人気があるんですよ。
ところが、最初は、人気がなくてね。
金魚の水槽のガラスを掲示板のようにして
メッセージをつけたりしてたんだけど、
どうやっても不人気だったんです。
ところがあるとき、原点に戻って、
ただただ金魚を映すっていうだけにしたら
なぜかみんなが観るようになったんですよ。
ま、ひとつだけコツがあって、
水槽の向こうに、働く自分たちを
見えるようにしたんです。
だから、ときどき、人が見える。
どっちにしても観るだけのものなんですが、
あれこれ工夫してたときよりも、
格段に人が観るようになったんです。
宮本 ああ、それはぼくが思ってるものに近いですね。
なんか、1日1回は電源を入れよう
っていうふうに思うような、
ちょっと寄っていくっていう感じ。
糸井 そうだね。
宮本 そういうものを目指していかないと、
クリエイティブにはならへんのでね。
糸井 それは、昔からずっと考えてたことですよね。
宮本 うん。ずっと変えたいなと思ってた。


続きます!
2005-03-28-MON