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いままでずーっとお絵かきソフトを
つくりたがってきた宮本さんが
『ピクトチャット』っていうかたちに
たどり着いた経緯をおうかがいしたいんですが。
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宮本 |
そうですね。まず、あの、
お絵描き系のものというのは、企画を説明すると、
「で、どうすんの?」って言われるんですよね。
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糸井 |
あはははははは。
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宮本 |
描くとこまではおもしろい、と。
でも、「で、それをどうすんの?」って言われる。
「どうすんの?」って言われてもね(笑)、
「楽しいでしょ?」って言うと、
「まあ、そういうのが楽しい人もあるけど」
って言われてね。で、だいたいこう、
エディターをつくってくんですよね。
その、描いたもので作品をつくって、
こう、人に見せられると。
で、「ああ、おもしろい」ってなるんです。
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糸井 |
つまり、「描いた絵に額縁がつきますよ」
ってことですよね。
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宮本 |
そうですそうです。そうすると、その、
エディターを覚えるのが
難しいってなってくるしね。
それから、見せられるけど、
見せる場所がないっていうのもあります。
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糸井 |
それからやっぱり、
「誰もが自由に絵を描けるほど
クリエイティブじゃないから、
あり物の材料を組合わせるだけで
遊べるようにしましょう」って、
必ず誰かが言い出して(笑)。
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宮本 |
そうそう、そういう話になってくる。
「はー、また同じ迷路に入っていくなー」
といつも思ってて。
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糸井 |
入るね、入るね(笑)。
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宮本 |
昔、あの、ピクショナリーっていう
ボードゲームがあったんですよ。
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糸井 |
はいはいはい。
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── |
はいはいはい。
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宮本 |
スゴロクのような盤の上を進みながら、
カードを引いて、指定された絵を描いて、
まあ、ジェスチャーゲームの
ジェスチャーの代わりに絵で伝えるゲーム。
あれにすごいみんな盛り上がったことがあって。
で、あれは、意外な人が、
絵で伝えるのがうまかったりするんですよ。
あの、絵のうまい人は、絵はうまいけど、
わりと、パッとこう一瞬で図形をとらえるとか、
特徴をとらえる能力が、意外と低い。
ところが、絵は描けへんけど、
ピクショナリーはうまいっていう人がいてね。
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糸井 |
伝わる絵が描けちゃう人がいるんだよね。
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宮本 |
ええ。形で特徴を伝えるのが
うまい人がいたりして。
それからまあ、とても絵にならないものとかを
絵に描いてみるとおもしろかったり。
で、ああいうのって、こう、
絵というものを消費してくからおもしろいわけで。
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糸井 |
そうですね、うん。
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宮本 |
ね。残すもんじゃなくて。
だからそれは、きちんと絵を描くこととは
対極にあるなと思ってて。
で、このニンテンドーDSという
通信も簡単にできるという機械を見ると、
ああいう、絵を消費するたのしみのための材料は
もう、ほとんどそろってたんですね。
だから、これはもう「早くつくろう」と。
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糸井 |
ああ、なるほど。たしかにそのたのしさですね。
いや、マシンを手に入れてすぐやったんだけど、
感動したよ、これ。
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宮本 |
あ、そうですか(笑)。
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糸井 |
たいした遊びもしてないんだけどね。
どこかから、誰かの、
くだらない絵が飛んできたっていう
それだけなんだけど(笑)。
あのね、まず永田君とぼくでやったんだけど、
永田君は最初、ぼくの隣でやってたの。
それでもおもしろかったんだけど、
そのうち彼が「じゃあちょっと‥‥」とか言って
便所の前まで行ったんだよ。
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宮本 |
ああ(笑)。
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糸井 |
なんの意味もないんだよ、それ(笑)。
離れたからといってさ。でもね、
「便所の前からこんにちは」っていうのが
送られてくるとね、もう、それだけで、
「おーーーっ!」って思う(笑)。
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宮本 |
そうなんですよ。
でも、この企画の話を最初に説明するとね、
「いや、そんな、絵なんて、
残せないとおもしろくないですよ」とか、
「カラーで描けないとつまらない」とか‥‥。
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糸井 |
言うよね(笑)。
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宮本 |
「そんな、声の聞こえるところにいるんだから、
しゃべりゃいいじゃないですか」とか
言うのがふつうの考えなんですよ(笑)。
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糸井 |
言うね、言うね(笑)。うん。
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宮本 |
ところが、試作品をつくって、
実際にやらせてみると、
ぜんぜんそうじゃないですよね。
「どこまで届くか行ってみよう」
とか言って歩く人がいたり(笑)。
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糸井 |
そうなりますよね。あと、なんていうの?
やってみてわかったこととしては、
「持ち絵」っていうのを
誰しも持っているっていうおかしさで。
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宮本 |
「持ち絵」?
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糸井 |
カラオケで「持ち歌」ってあるじゃないですか。
だから「困ると描く絵」みたいなものがあって。
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宮本 |
あー(笑)。
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糸井 |
そういうのが、苦し紛れに
押し出されてくるっていうのが
おっかしいんですよね。
それをみんなで遊べるんですよ。
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宮本 |
うん。これ、誰かがお題を出したりすると、
急に盛り上がったりするんですよ。
アメリカの連中とやってたときは、誰かが
「レッツ・ドロー・マリオ
(マリオを描こう)!」
って言ったら、ものすごく盛り上がって。
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糸井 |
ああ、なるほど。ぼくらはまだ、
そんな難しいことなんかしてませんよ。
というか、それをやられると、
ぼくはつまらないかもしれない。
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宮本 |
あ、そうですか?
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糸井 |
いやいや、たんにぼくの性格ですよ。
その、「ドロー・マリオ!」って出たときに、
いろんなマリオが出てくるんだろうなって、
ほら、答えがさ。
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宮本 |
ああ、思い浮かぶから(笑)。
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糸井 |
うん。答えがなんか見える。そうじゃなくて、
「なんか言わなきゃ、描かなきゃ!」
っていうほうがバカなことが出てきて
ぼくはたのしいんですよ。
なんか言わなきゃいけなくって、
ほんとに適切なものが出なかったときの、
自分の思いまで乗っかるんですよね。
で、しょうがないからイカ描いちゃった、
みたいなさ。
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宮本 |
ああ、わかる(笑)。
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で、「おまえ、またイカかよ!」って(笑)。
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糸井 |
そうそう(笑)。
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こないだ糸井さんとやっておかしかったのは
あれでしたね、ぼくが糸井さんに、
「あ~、糸井さんだ。サインください!」
って描いて送ったら‥‥。
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糸井 |
ぼくが「糸井重里」って描いて返した。
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宮本 |
(笑)
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