糸井 |
いやあ、おもしろかったです。 |
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本木 |
ありがとうございます。 |
糸井 |
あいさつもそこそこで
もうしわけないんですけど(笑)、
おもしろかった、ほんとに。 |
本木 |
いやあ、光栄です(笑)。 |
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糸井 |
どんなふうにおもしろかったかについては
おいおい中沢くんもまじえて‥‥。 |
本木 |
はい。 |
糸井 |
あ、中沢くん。 |
中沢 |
どうも、どうも。 |
本木 |
はじめまして、本木雅弘といいます。 |
中沢 |
中沢新一です。いやあ、よかった。 |
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糸井 |
おんなじこと言ってる(笑)。 |
中沢 |
え? |
糸井 |
まぁ、もとはといえば、
中沢くんに薦めたられたんだけどね。 |
中沢 |
いや、よかったからさ。 |
本木 |
でも、ちっちゃなころから、
マルクスとかの本を読んでるようなかたと、
こうしてお話させてもらえるなんて‥‥
だいじょうぶかな。 |
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中沢 |
そんな大げさな(笑)。 |
糸井 |
ちっちゃなころからマルクスって(笑)。 |
中沢 |
でもさ、そうそう、
本木さんがインドに行かれたときに、
本を編集されたでしょう? |
本木 |
ええ、よくご存知で‥‥。 |
中沢 |
だって、あのなかに、
ぼくの本からの引用があるんですよ。 |
本木 |
ああ、そうなんです!
先生の『チベットのモーツァルト』から‥‥。
もう絶版で古本でしか手に入らないんですけど、
この‥‥『天空静座』という本。 |
中沢 |
そうそう、それそれ。 |
糸井 |
写真集のような、詩集のような‥‥
ずいぶん凝った本ですね。 |
中沢 |
おもしろい本なんだよー、これ。 |
糸井 |
(本をめくりながら)
へぇー‥‥。
中沢くん、これ、知ってたんだ? |
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中沢 |
うん、モックンがこんなのつくったんだーって。 |
糸井 |
それって、いつくらいの話? |
本木 |
1993年に、出版されたものです。 |
糸井 |
ほー‥‥。 |
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本木 |
じつは当時、藤原新也さんの『メメント・モリ』に
衝撃を受けていて。 |
中沢 |
死を想え‥‥と。 |
本木 |
ええ。 |
糸井 |
で、インド漂流? |
本木 |
はい。 |
糸井 |
そこで、死を想った? |
本木 |
藤原さんの『メメント・モリ』には
ガンジスの川沿いに
焼け残った遺体が転がっていて、
それを犬が食いちぎり、
カラスがついばんだりしている写真が
載ってるじゃないですか。 |
中沢 |
うん。 |
本木 |
ニンゲンは犬に食われるほど自由だ‥‥なんて
言葉が添えられたりしていて。 |
糸井 |
ありましたね。 |
本木 |
なんて乱暴で、強烈なんだと思った反面、
直球で訴えかけてくるようなリアルな感覚に、
グッと掴まれてしまって。 |
糸井 |
なるほど。 |
本木 |
そのへんに死体が転がってる‥‥
そんなところがあるなら見に行こう、みたいノリで
男ばかり5〜6人で行ったんです。 |
糸井 |
そのときの体験をまとめたのが、この本? |
本木 |
そうなんです。 |
中沢 |
インドでは、なにが印象的でした? |
本木 |
そうですね‥‥やはり、ベナレスです。
そこに行くことがひとつの目的だったので‥‥。 |
糸井 |
ほう。 |
本木 |
そしたら‥‥意外にも、というか。 |
中沢 |
うん? |
本木 |
死は、日常のなかの「いち風景」として
生と、共存していた。 |
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糸井 |
なるほどね。 |
本木 |
ベナレスから帰るころには
こころが柔らかくなっていた‥‥というか。 |
中沢 |
いま、「生と死が共存していた」と
おっしゃいましたけれどね。 |
本木 |
はい。 |
中沢 |
そのとおり、死はね、そのへんに、ある。 |
糸井 |
そこに暮らす人のあたまのなかに、
死のイメージが、すでにあるというか‥‥。 |
中沢 |
そう、そうだね。 |
糸井 |
死とか貧困とか‥‥負のなにかが、
世界観のなかに存在してる感じですよね。 |
本木 |
はい、そんな気がしました。 |
中沢 |
つまり、日常に組み込まれてるんですよ。
‥‥死が。 |
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<つづきます> |