佐藤 |
人間が、対象を見て、
生き物か生き物じゃないかってことを
即座に判断できる人間の目の能力って
やっぱりすごいらしいんです(笑)。 |
田中 |
まだわかってない人間の能力って、
多いんでしょうねえ。
見えてないと思っているものが、
実はきっと見えてるはずなんでしょうね。
人間の眼の解像度があがることで、
急に見えはじめるものってありそうだ(笑)。 |
佐藤 |
そうそう。
実はものすごい情報量を、
人間は瞬間的に処理するわけでしょう。
だから、ロボットなんて、
人間に比べたらとても稚拙なレベルらしいですね。
人間のかたちをさせて歩けても、
未来をわかりやすくしてるだけで。
ああいうかっこうにさせるから、
なんかすごく進化したみたいに見えるけども、
感情移入をしてもらうために、
人間のかたちをしているらしいです。 |
田中 |
「ロボットらしい」かたちのほうが、
SF映画とかで慣れてますしね、
うれしいんですよね、きっと。
人間のことも、よくわかってないから、
デザインで、
認知科学だ、アフォーダンスだ、
みたいな話しても、
結局とどまるところが無いですよね(笑)。 |
佐藤 |
だから、面白いですよ。
デザインって、これからのほうが、
もっと面白くなるって、
絶対そうだと思いますよ。
“あ、そうだったのか!”ってわかることが、
いっぱいあるはずですよね。
わかってなかったんだけど、
自然に20世紀にやっていたことがね、
21世紀に、
“あ、こういうことだったのか!”って、
わかることがあるんじゃないかと思うんですよ。 |
田中 |
そういう意味でも、
長生きはしたいですよね(笑)。 |
佐藤 |
長生きしたいですよね(笑)。 |
田中 |
佐藤さんのデザインのベースに
しっかりとした好奇心が根をはっているから、
さらに掘り下げようという
科学への関心も深まりますよね。 |
佐藤 |
うん、好奇心しかない。それしかない。 |
田中 |
まだ見えないものをデザインするであったり、
未来のデザインみたいなところまで、
普通なかなか考えが及ばないと思いますよ。 |
佐藤 |
いやー、どうなんだろうね。
考えはじめると、
このまま、今のこの仕事のやり方を、
なんでずっと続けなければいけないのか、とかね、
そういうところに考えは至っちゃうんですよ。 |
田中 |
自分の仕事に関する好奇心が
出てきたってことですよね(笑)。 |
佐藤 |
そうそう。
“自分のやってることは、
いったい何だったの?”っていう、
その確認とかね、したくなるんですよ。
で、そうすると、
それからまた新しい何かやり方とか、
あるかもしれないし。
もっと別のぜんぜん違う、
人とのつながりや、
世の中でのデザインの生かし方が
あるかもしれないし。
なにを守るつもりもさらさらないので。 |
田中 |
ふつうなら安泰として、
守りに入っても誰も文句を言わないような、
佐藤さんのような立場の人が、
そういう過激さで、
ご自分の仕事について考えつめていらしゃるのが、
おもしろいというか、
頭が下がるというか、
自分自身を引き締めたくなりますよ。 |
佐藤 |
「ほぼ日」を見ている若いデザイナーって
多いと思うんですけど、
いつまで経っても、
デザイナーって、つねに、
なんか考えてるものなんですよ。
「いったいデザインって何なんだろうか」
ってことを、考え続けるんです。
今までって、ある程度、巨匠になっちゃうと、
“あの人のデザインのお話を聞きましょう”
みたいになっちゃうじゃない?(笑)
で、そうじゃなくて、
“もう、悩んでんだよ!”って言いたい(笑)。
もう毎日「ほんとにこれでいいのか?」って、
考えてるんだ、って伝えたい。
「でも、それはもうずっと続くんだぞ」って、
「でも、それが醍醐味なんだぞ」っていうように、
若いデザイナーに伝えたいですね。 |
田中 |
デザイン自体が、
発見を宿命づけられた行いということですね。
発見力、大事ですね(笑)。 |
佐藤 |
発見力、重要ですよね。
いろんな方が言っているように、
デザインはやっぱり見つけることではじまりますし、
見つけ続けるということをしないと
自分も面白くないんですよ。
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