|
糸井 |
堺くん、ひさしぶりです。
太ったり痩せたりしてるみたいだね。
|
堺 |
はい、太ったり痩せたりしてます。
今日はお腹を空かせて来ました。
|
|
糸井 |
飯島さんに焼きそばをリクエストしたんだって。
|
堺 |
はい(笑)。
|
飯島 |
そうなんですよ!
「LIFE」の2巻のために研究をしているんですが、
まだちょっと研究途中なんです。
|
堺 |
あ、そうだったんですか。
|
糸井 |
偶然なんですけれど、
焼きそばは彼女の隙間なんですよ、唯一の。
「飯島さんって、一番好きなもの何?」って訊いたら、
「私、焼きそばなんですよね」って言うんだよ。
|
飯島 |
そうなんです。
好きすぎて、完成させることができないでいる
レシピなんです。
今回、堺さんが焼きそばをとおっしゃるので、
さぞお好きなのかなと思ったら、
「最近食べてないから」って。
|
堺 |
はい、それだけなんです。
|
糸井 |
ふふふ、飯島さんにとっての焼きそばは
そんな軽いもんじゃないよ。
この人にとっては
人生の一つの中心が焼きそばなんだ。
|
堺 |
(ちょっと困った顔で)はぁ?
|
|
糸井 |
それを知っているから、
ぼくらは飯島さんに
焼きそばをリクエストできずにいるの。
|
堺 |
気軽に言ってみるもんですね。
|
飯島 |
今日は、焼きそばから考えて
メニューを構成しました。
|
堺 |
糸井さんも、ほら、
ウスターソース命の人じゃないですか。
|
糸井 |
好き、好き好き好き。
|
堺 |
僕は、どちらかといえば、
ウスターソース嫌いなので。
|
糸井 |
へ?え?!
|
堺 |
そんな私と、きょうは焼きそばを。
|
糸井 |
どういう展開になるんでしょう(笑)?
|
|
糸井 |
「嫌い」って言っても、
食べられない「嫌い」じゃないでしょ?
|
堺 |
ではなく。
|
糸井 |
ウスターソースで何でも済ましちゃうのが
嫌なんでしょ?
|
堺 |
そうです。
そこに流れていく自分が許せないんですよ。
|
糸井 |
わかる、わかる。雑だよね。
|
堺 |
極めると、そこに行く人の気持ちはわかるんです。
明日死ぬならそれっていうのはよくわかるんですけどね。
|
── |
あの、おふたり、立ち話もなんですから、
お座りください。
|
糸井 |
座っちゃうとさ、対談が始まりそうだからさ。
|
── |
いや、もう、そのまま、
話し続けていただいていいですよ。
きょうは飯島さんと、
映画「南極料理人」でいっしょに料理を担当した
榑谷孝子さんのおふたりが、
料理をつくってくださいます。
|
|
糸井 |
堺くんはたくさん食べてるんですよね、
飯島さんの料理を。
|
堺 |
食ってますね。
ぼくはここ(飯島さんのキッチンアトリエ)に
2回ほど習いに来ているんですよ。
|
糸井 |
それはご苦労様です。
あのエビフライをつくったのは誰?
|
飯島 |
2人で考案して、現場では榑谷さんに
担当してもらいました。
|
榑谷 |
長い付き合いなんです。
12年ぐらいになるのかな。
|
飯島 |
前の先生のときからですからね。
|
糸井 |
その先生っていうのは
伊丹十三さんの映画『タンポポ』から
フードコーディネートをしていたという
あの先生ですか。
|
飯島 |
そうです。石森いづみ先生。
|
糸井 |
やっぱり時代の歴史を感じるんだよね。
フードコーディネートの歴史だよね。
今は、食べ物の出てくる映画に
フードコーディネータがいるというのは
あたりまえのようになっているけれど、
それまでは、いなかったんですよね。
|
堺 |
美術部に何人かそういうおばちゃんがいるんですよね。
|
飯島 |
あ、おばさんなんですか。
|
堺 |
NHKは専任のかたがひとりいるんですよ。
もう全身真っピンクなおばちゃんが、
もう主みたいにいるんですね。
で、もう朝ドラと大河は、全部その人が作ってる。
|
|
糸井 |
はぁ?!
それは食べられるものなの、
食べられないものなの?
|
堺 |
うまいですよ。
|
糸井 |
おいしいものなの?!
ああ、そう。
飯島さんは映画は『かもめ食堂』からですよね。
ていうことは、その前は、
やっぱり伊丹さんだね。
|
飯島 |
そうですね。
|
堺 |
そうなんでしょうね。
|
糸井 |
恐ろしいな、やっぱり。伊丹さん、恐るべし。
(つづきます) |