糸井 |
これから、岡本太郎との縁って、
どうなっていくんでしょうね。 |
大西 |
僕は、やっぱり
「キャンバスからはみ出せ」ていう
ひとつの言葉を、
まだまだ追及してくだろうと思います。
そしていつか、
太郎先生の「気持ち悪さ」というか
太郎先生の「爆発」に
もしも到達することがあったなら、
自分はいったい
どんな精神力でいられるんだろう、
って思います。
ま、ゴッホが耳ちぎったりするんじゃないけども、
そういうとこまで突き進んだ自分って
どんなんやろ?って思うんです。 |
糸井 |
ああ、そうだね。行ってみたいよね。 |
大西 |
ええ、どんなんなんやろ。
でも、ゴッホが耳ちぎってしまうっていうの、
わかるような気がするときも
たまにはあるんですよ。
耳切って「イッター(痛)!」って
なってるときに、
グワーッて、どんなデザインが描けるのか、
自分がどんなんになるのかなあと、
思たりもしますよね。 |
糸井 |
それにギリギリ近いとこまでは行ってるんだ。 |
大西 |
僕ですか?
いやいや(笑)、まだそこまでは。 |
糸井 |
近所までは
行ってるんじゃないすか? |
大西 |
いやいや(笑)。
これからは、自分の精神的なものを、
おそらく追及しだすんでしょうね。 |
糸井 |
楽しみだね。だっていま、
まだ30代でしょう? |
大西 |
もう40になりまして。 |
糸井 |
な、なった? |
大西 |
はい、元旦が誕生日なんで。 |
糸井 |
あ、そう!
後半戦だね、じゃあ。
後半のほうが、自由になるらしいよ。 |
大西 |
そうなんですか。 |
糸井 |
マラソンでも、
往路と復路があるじゃない?
帰り道のほうが、飛ばせますよ。 |
大西 |
復路か‥‥。
子どものこととかも、考えたりするんですよ。
好きっちゃ好きやし、
子ども欲しいなぁ、とは思うんですけども、
でも、子どもを気にしたときに
自分が「はみ出せ」るのかな?って
思うんです。 |
糸井 |
そんなの、考えないほうがいいかもしれないよ。
自分を「手入れ」したらいい。
そしたら「子ども」っていう大水が来ても、
大丈夫ですよ。 |
大西 |
そうですかね? |
糸井 |
お父ちゃんとしての仕事もいいよ。
やけっぱちじゃないほうが、力がある。 |
大西 |
そうですね、たしかに。 |
糸井 |
真剣に何かをやりたいときに
子どもがいるからこんなことはできない、
ということがあるでしょう。
でも、その「邪魔」があるくらいのほうが
エネルギーって出るんですよね。 |
大西 |
なんか邪魔があるから、できる。 |
糸井 |
受験生でも、
お母さんが「紅茶が入ったわよ」なんて、
いちいち持ってきてくれると、
大学に落っこちるんですよ。
かまってもらえないで、
「チッ、自分でお茶入れなきゃ」
っていうほうが受かるんですよ。 |
大西 |
それは、確かにわかるような気がする。
邪魔があるときほど、
机に座ってられるかもわかんないです。
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糸井 |
うん、そうだよ、きっと。
岡本太郎がいつもそこにいるから
大きな邪魔があっても大丈夫だよ。
ああ、いいなぁ。
もう岡本太郎みたいな人に会うということは
そんなに、ないですかね? |
大西 |
そうですね。
先生はいつも、そこにいるから‥‥。
万博の最後、いろんなパビリオンや建造物は
解体されて、跡形もなくなりましたよね。
「太陽の塔」もほんまは、
つぶしたかった思うんですよ。
でも、つぶすのにコストがかかるから、
そのまま置いたらしいんですけども。 |
糸井 |
あれはつぶせないんですよ、やっぱり。
魔力があるんだよ、たぶん。 |
大西 |
ねぇ! |
糸井 |
理由なんか、いっくらでもつけられるけど、
つぶしたくないんだよ、あれ、みんな。 |
大西 |
つぶしたくないんでしょうね。 |
糸井 |
うん。たたりがあるからね(笑)。 |
大西 |
ハハハ。
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